研究課題
中枢神経系のマクロファージであるミクログリアは近年精力的に機能解析が進められている。それに対し、末梢神経内に存在するマクロファージは、神経損傷後のワーラー変性で細胞残骸を貪食することは古くから知られているが、それ以外の機能は分かっていない。前年度の研究から、末梢神経内マクロファージは、中枢神経系のミクログリアと同様に胎生期のマクロファージ前駆細胞を起源とする常在型マクロファージであることが判明した。そこで、末梢神経内マクロファージが発生期や成獣正常時で何らかの役割を果たす可能性を考え、本年度は機能解析に有用なツール作成を進めた。特定細胞の機能解析には、細胞特異的なCreドライバーマウスが有用である。そこで、ミクログリアには発現せず末梢神経内マクロファージに発現する分子を選定し、ミクログリアには影響を与えず末梢神経内マクロファージを遺伝子改変できるシステムを構築した。また、細胞の機能解析には細胞特異的除去実験が有用であるため、末梢神経内マクロファージに特異性の高い細胞除去技術の確立を目指した。マクロファージ系統細胞の生存にはCSF1受容体からのシグナルが重要であるため、CSF1阻害剤であるPLX3397の投与により、全身のマクロファージが除去されることが知られている。ミクログリアに対し末梢神経内マクロファージはPLX3397に対する感受性が高いことが判明したため、PLX3397の投与方法と投与量を調節することにより、ミクログリア数には影響を与えず末梢神経内マクロファージ数を減少させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
末梢神経内マクロファージの機能解析に重要な遺伝子改変システムと細胞除去技術を確立することができたため。
本年度確立した末梢神経内マクロファージ操作技術を用い、発生期や成獣正常時における機能解析を主に進める。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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