研究実績の概要 |
神経幹細胞分化を司るニューロエジェネティクス制御の全容解明とその分子制御メカニズムの解明のため、1)神経分化過程でのクロマチン構成分子およびその制御因子の網羅的な発現パターン解析、2)神経超長鎖遺伝子のmRNAの転写を許容するクロマチンダイナミックの制御メカニズムの解析、3)同定したクロマチン制御因子および構成因子の神経発生・分化における機能解析、神経エピゲノムと遺伝子発現に及ぼす影響の解析を行った。 1)Gene Ontology termのデーターベースから、クロマチンのcomponentおよびクロマチンリモデリングファクターの全gene listの作成を行った。この遺伝子リストを、申請者の作成したマウス胎児脳での神経初生・分化過程で発現変動する遺伝子の全リストと照合したところ、神経幹細胞特異的な発現を示した遺伝子が510個、そこから分化した神経細胞特異的な発現を示した遺伝子が268個同定された。このことから、神経幹細胞から神経分化過程でかなりダイナミックなクロマチン制御機構が存在することが示唆された。 2)RNA結合タンパク質Sfpqに依存した転写伸長制御機構の解明のために、Sfpqの核内での局在、さらにSfpqと相互作用する分子の免疫沈降と質量分析による神経超長鎖遺伝子発現制御複合体の同定を行った。質量分析によりSfpqと相互作用分子が1908個同定され、この中にRNA制御因子、クロマチン制御因子、エピゲノム制御因子が含まれていたことから、神経遺伝子の発現にカップリングしたニューロエピジェネティクス制御機構の存在が示唆された。 3)1), 2)のデーターをさらに統合して、神経発生過程で転写伸長を制御するニューロエピジェネティクス制御因子の絞り込みを行い、それらの機能解析と実際のデーター解析に着手した。
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