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2019 年度 実施状況報告書

ザンドホッフ病におけるアストロサイトを標的とした新規治療薬の創出

研究課題

研究課題/領域番号 19K06914
研究機関明治薬科大学

研究代表者

小川 泰弘  明治薬科大学, 薬学部, 講師 (00531948)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード活性化アストロサイト / 脳炎症 / リソソーム病 / ザンドホッフ病
研究実績の概要

本研究は、“脳炎症時でのアストロサイトを標的とした中枢神経系作用薬の創出”を目標としている。この目的のために、ザンドホッフ病モデルマウス(Hexb-KO)を脳炎症モデルとして利用し解析を進めている。令和元年度は、新規治療標的となりうる候補分子の探索などを中心に解析を行った。
Hexb-KOマウスにおいて、脳炎症がおこる原因の一つに炎症性サイトカインによるものが考えられる。実際に、TNFα欠損マウスとHexb-KOマウスの交配により、脳炎症による神経細胞死の減少が確認されている。まず、今回Hexb-KOマウスにおいて、我々が独自に報告してきた炎症性サイトカインであるIL-1αとTNFαによるアストロサイトへの影響を培養系で解析した。上述のサイトカインを初代アストロサイト培養に添加し、活性化アストロサイトマーカーの発現変化を定量PCR法により解析した。さらに新規に発現変化するタンパク質を、候補分子として質量分析法により同定した。このうち数種類において、脳炎症が進行しているHexb-KOマウス15週齢の大脳皮質に発現が増強していることが確認できた。興味深いことに、発現変化するものの中に、神経細胞毒性の原因と考えられるものがあった。これらのことは、上述の炎症性サイトカインは、治療標的になりうる可能性があることを示唆する。そこで、上述のIL-1αのシグナル伝達の下流であるMYD88のノックアウトマウスより培養アストロサイトを調整し、同様に定量PCRにより解析したところ、アストロサイトの活性化マーカーの発現が減少した。すなわち、この炎症性サイトカインが、アストロサイトにおいて神経毒性を持つ原因になることが示唆された。
また、上述の実験系に加えてHexb-KOの脳より各活性化状態にあるアストロサイトを選択的に回収するために、Hexb-KO とMlc1-tTAマウスを交配し準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

脳炎症時において、アストロサイトを効率よく回収する目的で、Hexb-KO とアストロサイト特異的に発現誘導することができるMlc1-tTAマウス(Hexb-KO;Mlc1-tTA)との交配を行っているが、これは現在ヘテロ接合子を得ており、その交配を進めている。この間に、培養アストロサイトを用いて、活性化アストロサイトに発現するタンパク質を解析し、数種の発見された分子群は、15週齢のHexb-KOマウスにおいても発現が増強することを発見した。また、治療効果を定量的に測定可能な遺伝子マーカーも数種同定した。上述の解析を含めると、15週齢のHexb-KOマウスのGFAP強陽性アストロサイトは、神経障害性の活性化アストロサイトであることが示されたが、この変化にはIL-1α/TNFαによるアストロサイトへの刺激が強く関与していることが示唆され、次年度の研究に繋げる成果が得られた。これを応用し活性化アストロサイトへの変化する機構に着目して、活性化に関与するシグナル伝達経路を利用してそのシグナル伝達経路の活性化を蛍光により可視化することに成功した。炎症性サイトカイン刺激に対して蛍光シグナルの増減を確認できたため、薬物のスクリーニングに繋げることができる。候補分子を抽出したことに加え、アストロサイトの活性化に関わる機構を利用したスクリーニング法も構築できたことから、研究の進捗状況は、おおむね予定通りに進行している。

今後の研究の推進方策

[1]Hexb-KOにおいて、炎症性サイトカインのシグナル伝達経路が実際に治療標的となるかを脳の炎症状態を指標に免疫染色や定量PCR法を用いて解析する。さらに脳機能の改善につながるかを、運動機能の改善を指標に検討する。これに関係して、可視化されたシグナル伝達経路の活性化を指標に、薬物のスクリーニングを行う。これにより抽出された候補薬物が、炎症性サイトカイン刺激を加えた培養アストロサイトにおいて、活性化アストロサイトマーカーの発現を抑制することが可能か解析する。
[2]質量分析により得られた候補分子をクローニングし、発現ベクターの作成を行う。これを用いて、培養アストロサイトに導入し、他のグリアやニューロンとの共培養系を用いてその機能の解明を行う。
[3]脳炎症時において、Hexb-KO;Mlc1-tTAマウスを利用し、アストロサイトを分取する。これにより、早期・中期・後期の各脳炎症状態にある活性化アストロサイトを回収し、先に候補として得られた分子を含めて遺伝子の発現変化等を解析する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Sandhoff病の病態とグリア細胞、その創薬薬理2020

    • 著者名/発表者名
      小川泰弘
    • 学会等名
      第93回日本薬理学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 1.ザンドホッフ病モデルマウスでのアストロサイトに発現するA2A受容体の抑制はミクログリアの活性化を抑制する2019

    • 著者名/発表者名
      小川泰弘
    • 学会等名
      NEURO2019(第42回日本神経科学大会、第62回日本神経化学会大会)

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公開日: 2021-01-27  

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