本研究は、“脳炎症時でのアストロサイトを標的とした中枢神経系作用薬の創出”を目標としている。この目的のために、ザンドホッフ病モデルマウス(Hexb-Knockout[KO])を脳炎症モデルとして利用し解析を進めた。令和3~4年度は、薬物によるアストロサイトの活性化抑制やそれに伴う候補分子の発現変化とザンドホッフ病モデルマウスにおける変化、新規薬物標的の解析を行った。 Hexb-KOマウスでの脳炎症の原因の一つである炎症性サイトカインにIL-1αとTNFαがあり、これらによって培養アストロサイトを刺激すると、活性化アストロサイトに発現するマーカータンパク質に加え、新規に発現変化するタンパク質も令和2年度に確認しており、その変化がザンドホッフ病モデルマウスにおいても起こりうるのかを解析した。IL-1αによるシグナル伝達経路はMyd88-NFκB経路がある。そこで、この経路を可視化しスクリーニングする目的でNF-κBシグナル応答配列にGFPを導入したアデノウイルスを構築した。これにより培養アストロサイトに遺伝子導入を行うことで、サイトカイン刺激によるGFPの発現強度の増強に対してその活性化を抑制しうる候補薬物の添加によるGFPの発現変化を解析した。これらのうち、抗精神病薬でGFPの発現が抑制されることが確認できたが、培養アストロサイトへの添加やHexb-KOマウスへの投与において、毒性が高いことが示された。そこでさらに他の候補薬物を同様に探索した結果、新規に1種類の薬物が得られたが、この候補薬物は、培養アストロサイトに対して活性化アストロサイトマーカーの発現を減少させた。残念ながら、上述の候補分子と同様にHexb-KOマウスへの投与において毒性が高いことが示された。そこで、再度スクリーニングした結果その他の候補分子が得られた。
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