研究課題/領域番号 |
19K06924
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 純 九州大学, 医学研究院, 講師 (70582708)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経新生 / 海馬 / セロトニン |
研究実績の概要 |
海馬歯状回顆粒細胞層下層では、発達後も顆粒細胞が産生され、成体においても神経回路の再編が行われている。「成体海馬神経新生」といわれるこの現象は、環境やストレスなどの外界情報の影響を受けることも知られている。神経新生の制御機構については、細胞レベル・分子レベル・遺伝子レベルの研究には一定の進展がみられるものの、海馬外からの投射経路に着目した広域神経回路レベルで解析についてはいまだ十分に行われていない。そこで本研究では、ストレスシグナルの伝達に関わる縫線核からのセロトニン作動系に着目して、神経新生を制御するメカニズムについて解析した。 神経回路特異的な制御を可能とする遺伝薬理学的手法を縫線核のニューロンに導入し、セロトニン作動系を活性化 (または不活性化) させ、生体海馬神経新生に与える影響を評価した。まず、セロトニン作動系神経終末が、海馬の歯状回に投射していることを見出した。さらに、その終末のターゲットについ探索を行ったところ、セロトニン神経終末がパルブアルブミン陽性GABAニューロン周囲に密に入力していることを見出した。さらに、セロトニン作動系を遺伝薬理学的に活性化することで、海馬神経新生が増加することがわかった。一方で、セロトニン作動性を遺伝薬理学的に不活性化させると、神経新生の減少が見られた。 本研究の結果は、海馬神経新生が縫線核からのセロトニンによって制御を受けていることを示唆するものであり、これがストレスに応じて神経新生が制御される機構に関わっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、神経新生を担う広域神経回路の実体について明らかにされつつある。特に、セロトニン作動系の回路特異的な制御が可能となり、セロトニンと生体海馬神経新生の関係について、その詳細が明らかとなってきている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、セロトニン作動性終末の海馬におけるターゲットについて、シナプスレベルでの解析を進める予定である。また、今後はノルアドレナリン作動系やアセチルコリン作動系に着目して、神経新生を制御するメカニズムについて解析する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の納入が年度内に間に合わなかったため、次年度に購入することとした。
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