研究課題/領域番号 |
19K06924
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 純 九州大学, 医学研究院, 講師 (70582708)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経新生 / コカイン / ケタミン / ドパミン |
研究実績の概要 |
近年、薬物依存症は海馬神経新生に負の影響を与えること、また神経新生を促進することが薬物依存の再燃と治療に有効であることが示されている。これまでに我々は、抗うつ薬ケタミンが成体海馬神経新生の促進作用があることを報告している。興味深いことに、ケタミンは薬物依存症の治療薬として有用であることを示す臨床研究が報告されているが、その詳細はほとんど明らかとなっていない。そこで、ケタミンが神経新生促進作用を介して薬物依存の治療薬として作用するかどうかを明らかにすることを目指した。 実験では、マウスに7日間のコカイン条件付け場所嗜好性試験を行い、条件付け終了後にケタミンまたは生理食塩水を投与した。ケタミン投与10日後から消去学習を行い、その後マウスにフットショックを与えて、ストレスによる依存の再燃と神経新生の変化を評価した。その結果、ケタミン投与群のマウスでは、生理食塩水投与群と比べて、コカイン条件付けボックスへの滞在時間が減少し、依存症様行動の再燃が軽減していた。一方で、ケタミンに加えて、神経新生を抑制するテモゾロミドを投与したマウスでは、ストレスによる依存症様行動の再燃が認められた。さらに、コカイン投与群では神経新生が減少していたが、ケタミン投与群ではコカインによる神経新生の減少は認められなかった。これらの結果は、ケタミンが神経新生促進作用を介して、神経新生を制御する可能性を示唆したものである。今後、コカインやケタミンのターゲットとなるドパミン作動性ニューロンと神経新生の関係についてさらに詳細な解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ドパミン系による神経新生の制御機構の一端が明らかとなりつつあり、海馬外からの入力と神経新生の関係について詳細な研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ケタミンによる神経新生制御機構の詳細について、神経回路レベルから細胞レベルの研究を展開する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部消耗品の購入の納期が次年度にずれ込んだため、次年度繰越金が生じた。
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