研究課題/領域番号 |
19K06928
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
辰巳 晃子 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90208033)
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研究分担者 |
石西 綾美 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10836018)
田中 達英 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80567032)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アストロサイト / Olig2 / 三つ組シナプス / GAT-3 / 抑制性神経伝達 / laser microdissection |
研究実績の概要 |
我々は成熟脳内に特徴的な局在を示すアストロサイトの亜集団(以下Olig2-AS)を見出しており、このアストロサイトがGFAPの発現が非常に弱いこと、そしてGFAP陽性アストロサイト (以下、GFAP-AS) とその脳内分布が排他的であることを明らかにしてきた。このOlig2-ASは淡蒼球、視床、小脳深部核など、主に抑制性神経の入力を受ける神経核に集積しており、この分布はグリア型GABAトランスポーターであるGAT-3の分布と非常に似通っていた。そこで「三つ組みシナプス」の観点から、Olig2-ASは抑制性シナプスにおいてGABA伝達に関与するアストロサイトの亜集団である可能性が高いと考え、まずこの仮説を検証するために各アストロサイトの遺伝子発現を解析した。 Laser microdissection法を用いてOlig2-ASとGFAP-ASを回収しmRNAの発現をリアルタイムPCRにより定量を行った。対象はマウスの淡蒼球とした。淡蒼球にはOlig2-ASとGFAP-AS共に豊富に存在しているが、これらは排他的に存在しているため同一神経核内に存在する各アストロサイトの機能の違いを比較するのに有効であると考えた。その結果、両アストロサイトにS100betaなどアストロサイトマーカー遺伝子、又GLT-1などグルタミントランスポーター遺伝子の発現には有意差はないものの、GAT-1, GAT-3などGABAトランスポーター遺伝子の発現はOlig2-ASが有為に高いことが明らかになった。又免疫組織学的解析結果と同様にGFAPの発現は有為に低いことも明らかになった。これらはOlig2-ASの機能解析へ向けて基礎となる遺伝子レベルのデータであり、これらの結果を纏めて論文投稿を行った。現在査読段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GAT-3遺伝子をOlig2-AS特異的にノックアウトする目的で、Slc6a11(GAT-3) 遺伝子に対するショートヘアピンRNA (shRNA) 配列を組み込んだアデノ随伴ウイルスをOlig2CreER成獣マウスのGPに注入する実験を行った。このウイルスはCre酵素存在下でshRNAを発現するのでマウスにタモキシフェンを連続的に経口投与することでGPのOlig2-AS特異的にGAT-3遺伝子をコンディショナルにノックアウトできると考えた。 しかしタモキシフェン投与量や期間など詳細に検討を行ったがCre依存的なノックアウトの効率が非常に悪く、行動試験を実施するに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Olig2-AS特異的にGAT-3を効率的にノックダウンするため、Slc6a11(GAT-3) 遺伝子に対するショートヘアピンRNA (shRNA) 配列を組み込んだアデノ随伴ウイルスのコンストラクトの見直しを行っている。効率的にノックダウンできれば、このマウスにおいて全般的な行動をOpen field test、運動の巧緻性をRotarod test、歩行をFoot printing等の行動実験バッテリーで解析を行い、コントロール群 (コントロールAAV注入群)と比較検討を行う予定である。
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