研究課題/領域番号 |
19K06930
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
石 龍徳 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (20175417)
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研究分担者 |
柏木 太一 東京医科大学, 医学部, 助教 (10398232)
篠原 広志 東京医科大学, 医学部, 講師 (10455793)
權田 裕子 東京医科大学, 医学部, 助教 (60424181)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海馬 / 成体脳ニューロン新生 / PSA-NCAM / DCX / マーモセット |
研究実績の概要 |
脳の大部分では、成体になるとニューロンは新生しないが、海馬の顆粒細胞層では成体になってもニューロン(顆粒細胞)の新生が続いている。この「成体脳のニューロン新生」は1960年代に齧歯類で発見され、現在再生医療、記憶・学習機構、精神疾患など様々な分野で精力的に研究されていが、ヒト海馬のニューロン新生レベルについては、2018年に、全く異なる結論の論文が出版され決着がついていない。本研究は、この問題の決着を目指して、ヒトとマーモセットを用いて成体脳ニューロン新生について検討することが目的であった。しかし、ヒトの手術摘出海馬の入手が難しく、本年度はマーモセットにおいて、成体脳ニューロン新生を検討することになった。固定したマーモセットの脳は、名古屋市立大学大学院医学研究科再生医学分野の澤本和延先生(研究協力者)より入手した。未熟ニューロンマーカー(PSA-NCAM, DCX)の抗体を用いて、マーモセット海馬の免疫組織化学を試みたところ、抗体賦活化の前処理によって、染色様式が異なることが判明した。そのため、種々の抗体賦活剤、前処理時間、前処理温度を検討し、最適な条件を見つけた。その最適条件おいて、PSA-NCAM陽性細胞とDCX陽性細胞の分布を比較した。顆粒細胞下帯には、比較的小型のPSA-NCAMとDCXを共発現する細胞が見られた。これらの細胞の突起は、放射状または顆粒細胞層に対して水平に伸ばされており、未熟なニューロンの形態を示した。その他、歯状回門に陽性細胞が見られたが、それらの細胞は大部分PSA-NCAM陽性であり、その一部がDCXも発現していた。以上から、PSA-NCAMやDCXを発現する未熟ニューロンの分布は、齧歯類よりもヒトに近いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトの手術摘出海馬の入手が難しく、マーモセットの海馬のみの解析となった。また、免疫染色法において、前処理の条件を決めるのに時間が掛かった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験から、マーモセット海馬の未熟ニューロンの分布は、ヒト海馬の未熟ニューロンの分布に非常に近いことが分かったので、今後は、マーモセット海馬の解析を中心に行うことにした。また、PSA-NCAMやDCXについては、免疫染色の前処理について方法が確立したので、今後はこの方法を用いることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、東京医科大学の疾患モデルセンターで、マーモセットを飼育する予定であったが、現在、疾患モデルセンターにおいて、ラット、マウス以外の大型動物を飼育する施設を廃止する動きが出ており、マーモセットを飼育するケージ、およびマーモセットを購入することが困難になっている。そのために、使用計画の変更を余儀なくされた。この話が本格化すると、今後マーモセットを飼育することができなくなる。そこで、マーモセットの海馬組織の入手先に関して、現在の名古屋市立医大以外のところを探索中である。候補として筑波大学からの入手を検討中である。2019年度の実験から、免疫組織化学に新しい抗体を使用した場合は、前処理、抗体のメーカーなどの検討がかなり必要であることが分かったこと、また、マーモセット切片が大きいため、予想よりも大量の抗体が必要であり、今後はそれらに多額の費用が掛かることが考えられる。また、コンピュータなどが老朽化(2010年度購入)しているため、広範囲の画像を取得する画像解析(マーモセットの海馬は、マウスと非常に比較して大きい)など、負担が大きい解析が困難になってきている。今後は、コンピュータなどを新しくし、高度な解析に耐えうる設備を整えたい。
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