研究課題/領域番号 |
19K06931
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
榊原 伸一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70337369)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | inka2 / アクチン / 接着班 / 細胞移動 / PP2A |
研究実績の概要 |
inka2は胎生期神経系においては延髄や脊髄の腹側部脳室周囲のオリゴデンドロサイト前駆細胞に強く発現する。培養細胞にinka2を強制発現させると、アクチン線維の細胞内配置の異常が起こり、細胞形態が球状に変化し細胞接着の阻害や過剰な数のフィロポディアが形成される。今回、我々はNIH3T3のスクラッチアッセイによりinka2ノックダウンにより細胞移動能の亢進が起きることを明らかとした。さらに細胞移動におけるinka2の役割を検討するためにinka2と相互作用するタンパク質を探索したところ、inka2がProtein Phosphatase 2A (PP2A)に結合しPP2Aの活性を抑制することで、接着斑(focal adhesion)の形成を調節し、細胞移動をコントロールすることが示された。PP2Aは細胞内の主要なセリン/スレオニンホスファターゼであり細胞周期や細胞移動など、多様な細胞機能を調節し複雑なシグナル伝達経路の制御に関わる。PP2A はA subunit(足場サブユニット)、B subunit(調節サブユニット)、C subunit(触媒サブユニット)の3 つのsubunit による三量体であり、三者が会合することによって機能するが、inka2はA subunitとC subunitの会合を阻害することでPP2A活性を抑制することが示された。さらに、全反射照明蛍光顕微鏡TIRFによるライブイメージング解析により、inka2によるPP2A活性抑制はfocal adhesion kinase (FAK)とpaxillinの相互作用を低下させ、接着班の形成頻度を低下させることで細胞移動を抑制することが示された。以上の結果からinka2は接着班形成を介して細胞移動を調節する新たな分子であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、研究施設、動物飼育施設の利用が制限された。そのため予定したサンプルの採取、解析のスケジュールが大幅に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに同定されたInka2と相互作用する他のタンパク質についてさらに詳細にその生理的意義を解析する。Inka2と候補タンパク質を細胞へ強制発現し、細胞移動関連タンパク質や細胞内シグナルタンパク質の挙動の解析により明らかにする予定である。さらにinka2特異的抗体の作製により、inka2 mRNAの翻訳抑制について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により予定していた研究計画に遅れが生じている。そのため研究計画を見直し、次年度以降に計画を移動することにした。助成金使用については主に細胞培養試薬、動物維持用試薬、消耗品等に使用予定である。
|