研究課題/領域番号 |
19K06933
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
浅川 和秀 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 客員研究員 (30515664)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ALS / オートファジー流動 / 選択的脆弱性 / 運動ニューロン |
研究実績の概要 |
神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)には、「運動ニューロンが特異的に変性し、感覚ニューロンや介在ニューロンは変性しにくい」という神経変性の特徴的な選択性がある。本研究は、熱帯魚ゼブラフィッシュにおいて見出した、ALS脆弱性を示すタイプのニューロンほど、オートファジー流動が生得的に高い、という独自の発見を基にして、オートファジー流動の高さとALS脆弱性の関連性を解明することを目指している。 令和2年度は、運動ニューロンにおいてオートファジー流動が相対的に亢進している現象のメカニズムを探る為に、ニューロンのATPレベルの増減を検知するiATPSnFRを用いた蛍光ATPセンサー発現するゼブラフィッシュ系統の作製を試み、成功した。このATPセンサーで検知できる範囲において、ゼブラフィッシュ稚魚においては、運動ニューロン、感覚ニューロン、介在ニューロンは、ほぼ同程度のATPレベルを維持していることを見出した。また、オートファジー流動を抑制する効果を発揮するmTORキナーゼを神経細胞種特異的に過剰発現する為のトランスジェニックフィッシュ系統の作製に成功した。この系統を用いて、運動ニューロンにおいてmTOR経路を活性化すると、細胞内ATPレベルが低下することを見出した。この結果は、オートファジー流動が、運動ニューロンの細胞内ATPレベルの維持に重要な役割を担っている、という考えを支持する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動ニューロン、感覚ニューロン、介在ニューロンといった中枢神経系の神経細胞で、オートファジー流動と細胞内ATPレベルをライブイメージングする系は、当初の予定通り整った。ゼブラフィッシュが水流に逆らって泳ぐ性質を利用し、急流を泳がせることにより、運動負荷を与える実験系の準備もほぼ予定どおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
運動負荷時や、令和元年度に作製したオートファジーに関連するALS原因遺伝子のゼブラフィッシュ変異体(tbk1変異体)において、オートファジー流動と細胞内ATPレベルの変化を、運動ニューロン、感覚ニューロン、介在ニューロンで評価することで、オートファジー流動とALS脆弱性の関連性を検証する。ALS耐性の眼球運動ニューロン(外転神経)とALS脆弱性の運動ニューロンを、細胞内ATPレベルを指標に比較することで、細胞内ATPレベルとALS脆弱性の相関を検証する。
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