研究課題/領域番号 |
19K06939
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
辻 隆宏 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (40787389)
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研究分担者 |
辻 知陽 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (00523490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バソプレシン / 概日リズム / 視交叉上核 / 網膜神経節細胞 / 光療法 / 精神機能 / 自閉症 |
研究実績の概要 |
神経ペプチドであるバソプレシン(AVP)やその類縁ペプチドであるオキシトシンは、体内水分保持などの全身状態の維持のみならず、近年では、その脳内での働きが注目されている。これらの神経ペプチドは特に自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害との関連があげられており、治療薬としての期待も寄せられている。ASDは、社会性障害のほかに、睡眠障害や感覚過敏など障害者家族にも負担がかかる症状が現れる。 申請者が発見した、AVP陽性網膜神経節細胞から脳内への投射経路の生理的機能を明らかにするために、モデルマウスの作製に取り組んだ。AVP細胞特異的にCre recombinaseを発現するマウス(Cre-AVP)を導入し、ROSA26-loxed-stop-tdTomato(Ai14)マウスと掛け合わせ、網膜での局在を確かめた。既報通り(J Physiol. 2017, Tsuji T et al.)、シグナルは網膜神経節細胞層と内顆粒細胞層に認められた。ついで、AVP陽性網膜神経節細胞特異的に、活性を制御するため、Cre依存的に発現するウイルスをAddgeneより入手した。AVP細胞は脳内では、主に、室傍核と視索上核に発現していることからまず、Cre-AVPマウスの脳内に入手したvirusを微量注入し、ウイルスが発現するかを検討した。その結果、いくつかのウイルスで十分発現し、既知の投射部位へ投射されることが確認できた。マウスの網膜神経節細胞へウイルスを導入するシステムを立ち上げるため、順行性トレーサーである594-CTB(chorela-toxin subunit b)を注入した。トレーサーは網膜神経節細胞内に広がり、脳内への投射を認めた。現在、網膜AVP細胞特異的に発現を確認できるウイルスについて検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入したマウスのバソプレシン細胞の網膜での発現を確認することができ、ウイルスを導入するシステムも立ち上げることができた。また、順行性および逆行性トレーサーウイルスの視床下部内への脳内微量注入法により投射あるいは被投射部位を観察することができ、報告されていない経路をいくつか発見できた。また、安価なwheel running計測システムを導入し、恒常暗、ジェットラグモデルなどを野生型マウスで確認することができた。視床下部のバソプレシン細胞で発現が確認できたウイルスを、網膜内へ導入する条件を検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
Cre-AVPマウス網膜にウイルスを用いて遺伝子を導入し、細胞破壊、活性化あるいは抑制化するシステムを立ち上げているところである。システムとしてはdiphtheria toxin subunit A、DREADD(hM4Di、hM4Dq)を考えている。ただし、脳内では動いても眼球内で動かない可能性もよくあり、いくつかトライする必要がある。代替方法として、現在ワークいているRosa-lslマウスと同様のシステムで作成されたマウスで、ヒトジフテリア毒素受容体発現(Rosa-lsl-iDTR)やDREADDシステムとして(R26-LSL-Gi-DREADDやR26-LSL-Gq-DREADD)の導入も検討する。 Cre-AVPとAi14の交配により、網膜のAVPの局在を確認することができた。この細胞について、免疫組織化学および遺伝子発現パターンなどについて検討をする予定である。網膜神経節細胞層に発現する細胞と内顆粒層に発現する細胞では大きさが違うので、フローサイトメトリーにより細胞の分離をトライする。モデルマウスが作成されるまでの間に、すでに導入された概日リズム計測装置を使い、申請者の作成した自閉症モデルマウスの概日リズムの計測を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題で支出予定だった設備備品(回転かご式自発運動量測定装置)やウイルスについて、学内施設にて共通機器として借りたり、一部剰余されたので、余剰分は次年度に繰越し研究の充実にあてる。
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