本研究の目的は,中脳の皮質下初期視覚,複数感覚統合,感覚運動変換の鍵として機能する上丘 (SC) の生理学的役割をを視覚機能を中心としてを明らかにすることである.特に,哺乳類の視覚機能に重要な大脳皮質視覚野 (V1) と上丘で作られる神経回路ループに着目し,2つの脳領域でやり取りされる視覚情報を細胞集団レベルの活動活動する手法,ループに関わる神経経路を選択的に操作する手法の開発した. 令和3年度では,前年度で最適化した V1 の領域に,ウイルスベクターの注入部位に,投射先の神経細胞に,シナプスを超えて感染すると考えられる AAV1-Syn-Cre を注入し,同時に SC には Cre 依存的に,カルシウム蛍光センサー(GCaMP6f,および細胞体により多く発現する somaGCaMP6f2) を発現させ,V1 から入力をうける SC の細胞の方位選択性,方向選択性の記録・解析手法を確立した.覚醒下とイソフルラン麻酔下で視覚応答を記録する過程で,SC の細胞集団がコードする方位・方向選択性が,脳の状態によってダイナミックに変化することを発見し論文で報告した. 前年度に引き続き光遺伝学法の刺激様デバイスとして,フィルム式の LED の使用を検討した.開発を行っている東大の研究者および大阪の企業と提携し,デバイスを提供いただき,V1 の活動の操作と SC からの同時イメージングの開発を進めている.より小型化したデバイスの作成を依頼し本実験系への適用を進めている.抑制性の DREADD 受容体である hM4Di を用いた化学遺伝学法による操作では 本実験系においても,DCZ の腹腔内注射によって,SC の視覚応答を変化させることを確かめた.光遺伝学法による細かい時間での神経活動操作は完成にはいたらなかったが,化学遺伝学法による大規模な活動操作(抑制)については完成することができた.
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