研究課題/領域番号 |
19K06941
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
若園 佳彦 宮崎大学, 医学部, 准教授 (90377755)
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研究分担者 |
緑川 良介 宮崎大学, 医学部, 助教 (20470320)
高宮 考悟 宮崎大学, 医学部, 教授 (40283767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | AMPA受容体 / N型糖鎖修飾 / 細胞膜への移行 / 全反射蛍光顕微鏡法 / 一分子動態観察 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、糖鎖修飾によるAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)の細胞膜への発現制御メカニズムを明らかにするため、全反射蛍光顕微鏡(TIRF)法を用いて、AMPA受容体のサブユニットの一つであるGluA1について、その合成から細胞膜への移行、さらに分解までの細胞膜近傍における素過程を、一分子レベルでの動態解析で検討することを試みる。 本研究計画では、以下の3つのステップに大別される。①観察(TIRF)システムの構築、②糖鎖修飾を欠損させた変異GluA1(N63Q、N363Q)に蛍光標識した発現ベクターの作製、③①と②を用いて、実際の一分子動態観察。 昨年度までに、市販の倒立型蛍光顕微鏡を改良し、高開口数(NA=1.5)の対物レンズを用いて、①のTIRFシステムの構築し、さらに研究計画の②の発現ベクターの作製に着手した。 我々の研究室では、GluA1の6ヶ所の糖鎖修飾部位のうち、N63とN363の変異によるこの部位の糖鎖欠損が、GluAの細胞膜への移行を阻害することを、主に生化学的手法を用いて報告している。今年度は、分子イメージングのための変異型GluA1(N63Q、N363Q)のベースとなる野生型GluA1に蛍光タグ、EGFP(緑色蛍光タンパク質)を付けた発現ベクターを作製した。 この発現ベクターを用いて、GluA1をHEK293細胞に発現させ、蛍光顕微鏡下、GluA1-EGFPの蛍光シグナルを細胞膜において確認した。また、これらの細胞を用いて、TIRF観察システムのさらなる最適化のためのブラッシュアップを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画においては、今年度がこの研究計画の最終年度であった。既述のとおり、研究計画では、①観察システムの構築、②発現ベクターの作製、③実際の観察によるデータの取得に大別され、これら①~③を順次遂行する予定であったが、現時点では、②の発現ベクターの作製半ばであり、残りの計画を完遂するには、さらに半年から1年を要するものと考える。従って、研究期間の延長を申請し、受理されている。 研究計画の遅延の理由としては、使用予定であった顕微鏡筐体の光学系が想定以上に汚損されていたこともあるが、最大の理由としては、やはり新型コロナである。新型コロナの蔓延に伴う行動の自粛要請は、日常生活を一変させ、研究以外の他の業務でのその対応に追われ、結果として、本研究は30%のエフォートではあるが、研究活動への間接的なしわ寄せとなった。さらに学術学会の中止や規模の縮小は、予備実験の結果などの成果発表や意見交換などの貴重な場を失うこととなり、サプライチェーンの停滞なども含めて、円滑な研究活動を十分に行うことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
概要に記述した通り、今現在、野生型GluA1にEGFPを繋げた発現ベクターを作製し、この発現ベクターを用いてHEK293細胞に強制発現させたGluA1-EGFPの蛍光シグナルが、細胞膜において観察されることを確認した。 現在、この野生型GluA1-EGFPが機能を保持しているか否かを、電気生理学的手法を用いてグルタミン酸に対する応答性により確認しており、さらにこれと並行して、糖鎖修飾部に変異を加えたGluA1(N63Q、N363Q)について、同様にEGFPを繋げた発現ベクターを作製している。 今後の研究の推進方策としては、これらの変異型GluA1について、以前に我々の研究室が報告した生化学的手法による解析と一致して、細胞膜での発現やグルタミン酸応答が消失していることを確認する。そしてこれらの確認を終えた後、①で構築したTIRF観察システムを用いて、野生型及び変異型GluA1の分子動態観察を行い比較検討する。TIRF法による蛍光像は、エバネッセント光の沁み出し厚により観察領域の深度が大きく変わり、そしてその染み出し厚は励起光の入射角に依存することが知られている。染み出し厚はAxelrodの式により概算可能であることから、励起光の入射角を調整しつつ、得られる蛍光像を比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度から続く新型コロナの蔓延に伴う行動の自粛要請により、主に学会参加などを目的として計上した旅費などの予算は執行されなかった。 また同様の事象により、研究計画に遅延が生じている(研究期間の延長手続き済み)ことから、研究予算の未執行分が生じた。
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