研究課題
神経細胞は軸索および樹状突起という2種の長い突起を介して神経回路を形成し、記憶、学習、認知など高次脳機能を可能にしている。軸索や樹状突起の末端には、他の神経細胞との情報交換に機能する膜タンパク質などが配置されている。それらは主に神経細胞体で生合成され、小胞輸送によって突起内を機能する場所へと運ばれていく。正常な神経活動を維持するためには、シグナル分子などを遠方の正しい場所へ、必要な量だけ輸送することが必要である。それにはエンドソームなどの小胞輸送が関わっている。小胞の輸送は低分子量GTPaseであるRabによって制御されている。我々はRab11というリサイクリングエンドソームの輸送を制御する因子LMTK1を見つけ研究を行ない、LMTK1は神経細胞の軸索、樹状突起、スパインの形成、維持に必要であることを示した。更に、アルツハイマー病の原因因子として知られるアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)の切断を行うBACE1の細胞内輸送に影響を与えることを見つけ昨年報告した。LMTK1の変異は神経変性疾患のリスク要因であることも報告されているが、それはBACE1の輸送障害を介しているのかもしれない。本年度は海外の共同研究者が見つけた発達障害に関わる遺伝子変異についても解析し、その変異はLMTK1の軸索突起伸長に僅かではあるが影響を与えることを見つけた。LMTKにはLMTK1~3までのアイソフォームが存在する。我々は主にLMTK1についての研究を行ってきたが、LMTKに関する初めての国際会議(virtual meeting)が2023年に開催され、LMTK2やLMTK3は発がんに関わっていることが報告された。発がんの仕組みは不明であるが、LMTKは細胞内の小胞輸送を介してさまざまな疾患に関わっており、それらの治療対象にもなる可能性が示されている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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