研究課題/領域番号 |
19K06943
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
阿久津 仁美 岩手医科大学, 医学部, 助教 (30398482)
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研究分担者 |
加茂 政晴 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (40214564)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ラット / 雌性フェロモン / 鋤鼻感覚細胞 / 行動観察 / 中枢神経 / 最初期遺伝子 / 免疫組織化学 |
研究実績の概要 |
申請者らがこれまでに確認している「雌ラット尿中生理活性物質が雄ラット鋤鼻感覚細胞に細胞内カルシウムイオン濃度の特異的上昇を引き起こす」現象を、個体の行動的反応と中枢神経活動から検証するため、雌ラット尿に直接接触できる環境に雄ラットを導入しtて、尿に対する探索行動を観察し、その持続時間を計測した。 成熟雄ラット(週齢11‐16週)を、紙製床敷を入れた行動観察用ケージ(透明アクリル製:60x45x45cm)に入れ、30分間馴化させた。このケージの四角には紙製のマウス用巣(シェファードシャックドーム型:SSP社製)を半切したものを紙テープで固定し、内部にはキムワイプを入れた。マウス用の巣は、ラットが頭部のみを内部に入れられるサイズである。馴化後、1か所の巣内キムワイプには雌ラット尿(発情前期尿、発情休止期尿)希釈液(2倍希釈)を400ul、その他3か所の巣内キムワイプには希釈に使用した生理的食塩水を400ulしみこませ、ラットの行動を30分間観察・記録した。ラットが周囲環境の匂いなどを受容して発生した神経活動のコントロール群として、尿希釈液を用いずに生理的食塩水のみを暴露した実験も行った。 30分の馴化でケージ内の環境に慣れたラットは、尿希釈液を巣に注入されるとその匂いに対して反応を示し、匂いを嗅ぐ探索行動を示した。探索行動は発情前期尿(P尿)と発情休止期尿(D尿)の両者に対して顕著に発現し、その持続時間はP尿:283.12±75.33秒、D尿:247.76±79.26秒で、両者間に有意な差異は見られなかった(P尿群、D尿群ともにn=6)。 行動観察後、尿暴露から1時間半経過した時点で、安楽死させて全身灌流固定し、鋤鼻器を含む吻部と脳を採材して、吻部は後固定、脱灰処理後に耐凍結処理をしてコンパウンド包埋、脳は後固定と耐凍結処理をしてコンパウンド包埋した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
行動観察とそのあとのサンプリングまでのプロトコルを確立するために時間がかかったことと、採材後のラットの吻部の脱灰処理が数か月におよび、切片作製や免疫組織化学まで至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
コンパウンド包埋してある雄ラットの吻部と脳の凍結切片を作製し、抗c-Fos抗体を用いた免疫組織化学染色をおこなう。P尿群、D尿群、コントロール群(生理的食塩水暴露群)の3群で吻部と脳におけるc-Fos発現を比較することにより、P尿群特異的に活性化された神経核の特定をおこなう。 雄ラットに雌ラット尿を暴露しておこなった行動観察を、雌ラットに対して同様におこなう。行動観察と免疫組織化学の結果から、雄ラットと雌ラットに対して雌ラット尿中生理活性物質(フェロモン)がどのように影響を与えるのかを、鋤鼻感覚細胞と中枢神経細胞の活性化から検討し、考察する。 さらに、幼弱ラットを用いて同様の実験をすることにより、雌ラット尿中生理活性物質が鋤鼻感覚細胞に受容されて中枢神経を活性化する週齢を特定することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、ラットの行動観察と採材した吻部や脳の免疫組織化学染色のための処理をおこない、行動観察用ケージやビデオカメラ一式、紙製床敷や巣、ピペットやピペットチップなどの物品と、免疫組織化学用試薬類を使用して実験をおこなったが、いずれも前年度までに購入しておいたものであったため、2022年度の使用予定の物品・試薬費は未使用であった。 2023年度には引き続き実験をおこなうため、ラット、実験用消耗品、実験用試薬などの購入を予定している。
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