ラット雌性尿中生理活性物質が成熟雄ラットに与える行動的影響とその行動発現に関わる中枢神経回路の解明を目的として、昨年度に行動試験をおこなったラットから採材した組織を用いて、今年度は尿中生理活性物質を含むと思われる雌ラット発情前期尿に接した雄ラット(ニオイをかぎ、直接舐めるなどの接触を確認したラット)の鋤鼻感覚細胞活性化の痕跡を、免疫組織化学にて検出を試みた。 発情前期尿に接した雄ラットの吻部は、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)にて全身灌流固定後に、後固定を経て、30%sucroseにて耐凍処理をおこなった後に、コンパウンド包埋をして‐30℃にて保存された。クリオスタットにて20µm厚の凍結切片を作製し、免疫組織化学染色に共試した。雌ラット尿の代わりに生理的食塩水に接触したラットの吻部も、同様の処理を経て凍結切片を作製し、コントロールとして免疫組織化学染色に共試した。抗体は、抗olfactory marker protein(OMP)抗体と抗phospho-S6 Ribosomal protein(pS6)抗体を用いて、OMPを発現する機能的成熟鋤鼻感覚細胞の、雌ラット尿中生理活性物質受容による活性化を可視化することを試みた。 結果として、pS6の発現は認められず、鋤鼻感覚細胞の尿中生理活性物質の受容による活性化は検出できなかった。今後は、やはり神経の活性化の痕跡の検出に用いられc-Fos抗体を用いて、同様の検証をおこなっていく。
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