脳神経細胞の活動応答は、同一の感覚刺激に対しても試行毎にゆらぐ。このゆらぎは情報処理の効率を低下させる「ノイズ」だと想定されている。神経応答のゆらぎはどのように生じるのだろうか?本研究では、マウスのヒゲ刺激に対して大脳皮質神経細胞が示す応答振幅のゆらぎが「ノイズ」ではなく、申請者が見つけた視床網様核(TRN)の新規集団振動活動によって能動的に生み出されている可能性を検証する。TRNは、その形態学的な特徴から、膨大な感覚入力を受け取る視床から大脳皮質へ伝える情報を選別(sensory gating)する「門番」と言われる。申請者は「光ファイバー蛍光測定装置」を開発し(Natsubori et al. 2017 JNeurosci)、Ca2+感受性蛍光蛋白質がTRNに発現する遺伝子改変(Tg)マウスへ適用して、TRNの集合活動の計測に初めて成功し、それが低周波数で振動していることを見つけた(第41回日本神経科学会ポスター発表、Neuro2019シンポジウム講演)。次年度は圧縮空気噴射装置を用いたマウスのヒゲ刺激時の大脳皮質バレル野における電気生理学的応答の計測と、TRN活動の蛍光計測との同時計測に成功した。
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