研究実績の概要 |
チャネルロドプシン2を発現した新生児から脳幹-脊髄標本を摘出し,ホールセルパッチクラン法を用いて延髄腹側あるいは背側から細胞内記録を行った.セルアッタチモードで,光刺激(青色LED)を行い,発火頻度の変化が起こるニューロン(つまりPhox2b陽性ニューロンの可能性が高い)を細胞外シグナルで確認した後,ホールセルモードに移行し,細胞内記録を行った.テトロドトキシンによりシナプス伝達をブロックした後,光刺激に対する膜電位応答,高二酸化炭素刺激あるいは低酸素刺激に対する膜電位応答を調べた.高二酸化炭素刺激は,2%CO2, 95%O2でバブリングした潅流液を 8%CO2, 92%O2 でバブリングした潅流液にスイッチすることで行った.また,低酸素刺激は95%O2, 5%CO2でバブリングした潅流液から,0%O2, 5%CO2, 95%N2でバブリングした潅流液にスイッチすることで行った.記録したニューロンはルシファーイエローまたはニューロビオチンで染色した.また,Phox2b陰性ニューロン(特に呼吸性ニューロン)についても同様の実験を行った.実験終了後,記録位置を同定し,Phox2b陽性およびチロシン水酸化酵素(TH)陽性かどうかなど免疫組織学的解析を行った.Phox2b+/TH+ニューロンは低酸素刺激に対し,3 mVの脱分極を示したが,高二酸化炭素刺激には応答しなかった.Phox2b+/TH-ニューロンは低酸素刺激には応答せず,高二酸化炭素刺激に対しては,10 mVの脱分極を示した.Phox2b-/TH-ニューロンは低酸素刺激に対しては,-2 mVの過分極を示したが,高二酸化炭素刺激に対しては反応しなかった.Phox2b+/TH-ニューロンは高二酸化炭素刺激に対して,Phox2+/TH+ニューロンは低酸素刺激に対して,より特異的に応答することが示唆された.
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