研究課題
昨年の研究の継続として,新生児ラット摘出脳幹-脊髄標本を用いて,延髄吻側腹外側部の呼吸・循環関連ニューロンから細胞内記録を行い,低酸素および高二酸化炭素刺激に対する膜電位応答をTTX存在下で調べた.Phox2b+/TH+ニューロンは低酸素刺激に対し,平均3 mVの脱分極を示したが,高二酸化炭素刺激には応答しなかった.Phox2b+/TH-ニューロンは低酸素刺激には応答せず,高二酸化炭素刺激に対しては,平均10 mVの脱分極を示した.Phox2b-/TH-ニューロンは低酸素刺激に対して,脱分極を示すもの,過分極を示すものなどニューロンによって異なる反応を示したが,平均すると-2 mVの過分極を示した.本年度はこれに加えて,延髄孤束核細胞の低酸素および高二酸化炭素刺激に対する応答を,カルシウムイメージング法を用いて調べた.この実験は,孤束核にカルシウム感受性色素であるオレゴングリーンを注入し,染色された細胞の刺激に対する応答をカルシウムシグナルの蛍光強度の変化として捉えるものである.実験は,まず高二酸化炭素に対する反応を,次に低酸素に対する反応を調べた.最後に低カリウム溶液で刺激を行った.このテストは,アストロサイトは低カリウム刺激によって,細胞内カルシウム濃度上昇を示すが,ニューロンは示さないという先行研究の結果に基づいている.これらの一連のテストを,異なる4つの細胞外液潅流下で行った:1)通常の人工脳脊髄液 (ACSF),2)シナプス伝達遮断下(NBQX, MK-801, ビククリン,ストリキニンを含むACSF),3)TTX存在下,4)TTX+フルオロアセテート存在下.その結果,孤束核細胞の7-8%は低酸素または高二酸化炭素刺激に応答し,そのうちの2%は両方の刺激に応答することが分かった.また,これらの細胞のうちおよそ50%はアストロサイトであることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
孤束核細胞の低酸素および高二酸化炭素刺激応答に関する結果は,論文として発表した.
今後は,延髄吻側腹外側・呼吸循環領域の細胞の応答について,さらに追加の実験を行い,論文として発表する予定である.
年度末に論文掲載料(約30万円)及びSSDのデータ修復費用(約27万円)が発生したが,年度末のため処理できなかった.今年度,速やかに処理を行う予定である.
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