研究課題
これまでの研究で,新生児ラット摘出脳幹-脊髄標本を用いて,延髄吻側腹外側部の呼吸・循環関連ニューロンから細胞内記録を行い,低酸素および高二酸化炭素刺激に対する膜電位応答をTTX存在下で調べてきた.その結果,Phox2b+/TH+ニューロン(いわゆるC1アドレナリンニューロン)は低酸素刺激に対し,脱分極を示したが,高二酸化炭素刺激には応答しなかった.Phox2b+/TH-ニューロン(pFRG/RTNニューロン)は低酸素刺激には応答せず,高二酸化炭素刺激に対しては,脱分極を示した.Phox2b-/TH-ニューロンは低酸素刺激に対して,脱分極を示すもの,過分極を示すものなどがあり平均すると-2 mVの過分極を示した.これらの実験はTTX存在下で行われたので,その細胞の内因性応答を示すと考えられるが,周囲のアストロサイトが低酸素および高二酸化炭素刺激に直接反応(TTX非依存性,Ca2+依存性)し,その結果アストロサイトから放出されたATPがP2受容体を介して,ニューロンに作用するという可能性も考えられた.そこで2021年度は主に,アストロサイトを特異的に興奮させるとされるPAR1アゴニスト(TFLLR)の効果を調べた.カルシウムイメージングにより,TFLLRが呼吸中枢エリアの細胞を活性化することが明らかになり,これらの細胞の80%以上はアストロサイトであることが確認された.この時,呼吸リズムはわずかに抑制され,その後回復する(またはやや促進される)ことが分かった.呼吸中枢エリアのニューロンの膜電位解析で,TFLLRは呼吸性ニューロンを一過性に過分極させることが明らかとなった.これらの結果より,少なくとも新生児ラットの呼吸中枢では,アストロサイトの活性化には,呼吸リズムを強く促進する効果はないことが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
おおむね,予定通りに進んでいる.
TFLLRの作用については論文発表の準備を行っている.また延髄吻側腹外側・呼吸循環領域の細胞の応答についても,さらに追加の実験を行い,すみやかに論文として発表する予定である.
コロナ感染拡大のため,呼吸調節の国際学会(オックスフォードカンファレンス)の開催が,2022年に延期されたため.この学会は,2022年10月に開催される予定であるので,その参加費などに使用する.
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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