研究課題
これまでの研究で,新生児ラット摘出脳幹-脊髄標本を用いて,延髄吻側腹外側部の呼吸・循環関連ニューロンから細胞内記録を行い,低酸素および高二酸化炭素刺激に対する膜電位応答をTTX存在下で調べてきた.その結果,Phox2b+/TH+ニューロン(いわゆるC1アドレナリンニューロン)は低酸素刺激に対し,脱分極を示したが,高二酸化炭素刺激には応答しなかった.Phox2b+/TH-ニューロン(pFRG/RTNニューロン)は低酸素刺激には応答せず,高二酸化炭素刺激に対しては,脱分極を示した.Phox2b-/TH-ニューロンは低酸素刺激に対して,脱分極を示すもの,過分極を示すものなどがあり平均すると-2 mVの過分極を示した.これらの実験はTTX存在下で行われたので,その細胞の内因性応答を示すと考えられるが,周囲のアストロサイトが低酸素および高二酸化炭素刺激に直接反応(TTX非依存性,Ca2+依存性)し,その結果アストロサイトから放出されたATPがP2受容体を介して,ニューロンに作用するという可能性も考えられた.そこで2022年度は引き続き,アストロサイトを特異的に興奮させるとされるPAR1アゴニスト(TFLLR)の効果を調べた.さらに予備実験としてグリオトランスミッター受容体のブロッカー存在下における低酸素応答を検討した.TFLLRは呼吸中枢エリアのアストロサイトを強く活性化したが,呼吸リズムはわずかに抑制され,その後回復する(またはやや促進される)ことが分かった.またPhox2b+/TH+ニューロンの低酸素応答は,グリオトランスミッター受容体のブロッカー存在下においてもみられることが示唆された.これらの結果より,少なくとも新生児ラットの呼吸中枢では,アストロサイトの活性化は低酸素応答に主要な働きをしていないと考えられた.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)
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