最終年度となる本年度は、前年度の実験結果の更なる検証とともに、主に実験課題2であるコリン作動性制御機構の解明、そして遺伝子発現の変化を単一ニューロンで確認する手法の獲得をめざした。まず、第4層でのニューロン膜興奮性の変化については暗所飼育により有意な差は見られなかった。次に、実験課題2において、シナプス応答のニコチン性制御を検討したところ、1)第4層抑制性ニューロンにおける視床皮質系シナプスでの応答の大きさには有意差はなかったが、応答確率は減少し、2)興奮性ニューロンでの抑制性ニューロンからの抑制性シナプスでは変化はなかったが、興奮性ニューロン間の同期性の増加が観察された。さらに、盲目による皮質ニューロンでの遺伝子発現変化に関して、蛍光in situハイブリッド形成法を用いた特定の遺伝子発現の変化の解析に着手した。 3年間の研究成果としては、提案したすべての実験を完了するには至らなかったものの、新たに盲目によるシナプス応答の変化が観察され、新たな知見を得られた。また、単一ニューロンにおける電気生理学実験と分子生物学実験、およびニューロン形態解析の融合が可能になり、今後の研究の基盤を構築できた。さらに、網羅的遺伝子発現解析に加えて、単一ニューロンにおけるPCR法や蛍光in situハイブリッド形成法による個々の遺伝子発現解析が可能となった。研究論文として出版できるまでの結果はまだ得られていないが、研究で得た知見および研究手法の獲得の観点から、今後の研究を進める上で大きな財産を得たといえる。 なお、研究の一部は本年の日本生理学会大会で発表した。
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