研究課題/領域番号 |
19K06949
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
節家 理恵子 (市原理恵子) 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (30532535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マーモセット / 発声 |
研究実績の概要 |
マーモセットは非常に多くの種類の鳴き声を用いて他のマーモセットとのコミュニケーションを行うことが知られている。また、その鳴き声の一部はヒトと同様に生後、tutorとの鳴き声のやり取りによって、学習により獲得されるものであることが近年示された。しかし、学習によって獲得される鳴き声に寄与する脳内メカニズムや、その責任部位はほとんど明らかになっていない。本研究では学習によって獲得される鳴き声の発声に寄与する脳領域の同定を目的としている。本年度は、成獣になってから入手した、個別飼育下の3頭のオスのマーモセットについて、飼育ケージ内並びに隔離防音実験室内における発声パターンの解析を行った。実験施設における正常飼育下の成獣に観察されることが報告されている多種多様な鳴き声が、3頭の実験個体においても観察されることを確認した。しかし、個別飼育下の個体は集団飼育下の個体に比べて著しく発声頻度が低く、隔離実験室内での発声もほとんど観察できないことから、飼育ケージに工夫を加えることで、この点を改良した。これら、マーモセットを対象とした音声解析については、Sound Analysis Workshopにおいて報告を行った。一方、発声に寄与する脳領域を活性化あるいは抑制する方法として、光遺伝学の利用を検討しているものの、げっ歯類に比べて霊長類では対象脳領域のサイズが大きい。そのため、対象領域全体に光照射を行い、かつ脳への侵襲性を抑えるためには工夫が必要である。そこで、申請者はより広域の脳領域に対し、光遺伝学的神経活動の制御を可能とする側面発光Optic fiberの作製方法を確立し、hemoglobinによる光の吸収を考慮に入れたOpsin活性化波長の選択によりより従来の方法に比べて有意に広い脳領域への光照射とそれによる光遺伝学的神経活動制御が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
隔離防音実験室内におけるマーモセットの鳴き返し実験のみでデータを揃えることことを想定していたが、個別飼育下での個体では、隔離防音実験室内において、鳴き返しをほとんど行わないことが判明した。このため、飼育環境の改善と、実験方法の見直しが必要であり、鳴き返し実験の開始までに少し時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、隔離防音実験室におけるマーモセットの鳴き返し実験を行い、発声時に寄与していることが推定されている脳領域の電気生理学的なマッピングを行う。また、発声責任領域と推定される脳領域が同定されたのち、その領域を電気刺激あるいは光刺激によって活性化し、発声行動を誘発できるか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
やや実験計画に遅れが生じてしまったため、マーモセットへの電気生理学実験等がまだ開始できておらず、そのため、使用額にずれが生じている。今後それら一見についても開始できるため、次年度に使用する予定である。
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