研究課題/領域番号 |
19K06951
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田尾 賢太郎 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (10708481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経生理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、シリコンプローブをもちいてマウスの腹側海馬CA1野 (vCA1) より多細胞同時電気生理記録を実施することで、既知の他個体との社会的相互作用において他者細胞のセルアセンブリがどのように組織化されているのか、睡眠中および覚醒安静時にどのような自発活動パターンを示すのか電気生理学的に検証することである。 2019年度は、シリコンプローブをもちいたvCA1からの慢性電気生理記録を確立したうえで、マウスが新奇または馴化他個体と相互作用する課題中および課題後の睡眠中において神経活動を記録した。その結果、少数 (10%程度) の神経細胞が馴化他個体に対して選択的に反応することを確認した。このような他者細胞は、被験マウスが刺激マウスと接触可能な距離で相互作用しているときのみならず、離れた位置から刺激マウスの方角を向いているときにも観察された。さらにこれらの他者細胞は、睡眠中などに海馬で観察される特徴的な脳波であるリップル波の発生中に、同期的に活動していることが判明した。課題中に記録された神経活動パターンをもとに、リップル波中に観察された神経活動をデコードしたところ、睡眠の初期には新規他個体の情報がより多く表現されているという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に記載した、課題中の活動タイミングと海馬局所場電位の関係やセルアセンブリの解析については確定的な結論が得られていないのが現状ではあるものの、後述するように自閉症関連遺伝子であるShank3欠損マウスをもちいて野生型マウスの結果と比較する方向に研究が発展しつつあり、全体としてはおおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
セルアセンブリ解析の障害となっている実験あたりの記録細胞数の少なさを克服するため、シリコンプローブのインピーダンス修正をこころみる。ここまで野生型マウスをもちいて実施してきた内容について、自閉症関連遺伝子であるShank3欠損マウスをもちいて同様の実験および解析を実施する(現在1例取得済み)。以上の結果をまとめて投稿論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度参加予定の学会について、懇親会費を誤って本研究費の旅費から執行してしまい、その付け替え処理が会計年度を跨いだため差額が発生した。当該助成金は次年度の物品費として使用する。
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