研究成果の概要 |
水素ガス(H2)吸入は脳虚血時に神経保護作用を発揮することが知られているが, その機序は未解明である。本研究はH2によるエネルギー代謝の代償機転の機序を解明することを目的とした。H2で特異的に作動する受容体を洗い出すため, 脳梗塞モデルマウス実験系を用いメタボローム解析を行った。虚血によって亢進するプリン体の分解が, H2投与により抑制された。またクエン酸回路のメンバーであるコハク酸の集積が減少することが判明した。これらの結果は, H2が虚血再灌流後のsuperoxide generationを抑制する可能性を示唆するものである。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
脳梗塞は可能な限り早期の治療開始が原則であるが, 治療法は少なく, 治療の開始が間に合わず神経症状が増悪することが多々ある。そのために入院期間やリハビリ加療が長期化することになり, 今後の高齢化社会に伴って医療経済を圧迫する可能性が大きい。水素吸入療法は, 従来型のtPAによる血栓溶解療法に比べ, 経済的にも技術的にも有利である。水素は分子量2とすべての分子の中で最小であり, 拡散によって虚血巣へも容易に到達できることから, drug deliveryの観点において, tPA静注など血流依存性薬剤の追随を許さない。救急車内での治療の早期化が実現でき, 予後の改善に直結するものと期待する。
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