研究課題/領域番号 |
19K06961
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
小林 克典 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10322041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳・神経 / うつ病 / 海馬 |
研究実績の概要 |
本研究は自身が提唱するうつ病の神経脱成熟障害仮説の検証を目的とし、そのための動物モデルと行動評価系の開発を一体として進めるものである。豊富環境での脱成熟誘導の可能性に着目し、豊富環境での行動変化をうつ様行動の指標とする新規行動評価系を確立するとともに、特に脂質生合成経路に着目して病態基盤となる神経メカニズムを解析する。初年度の実績は以下の通りである。1)通常の飼育環境と豊富環境で飼育したマウスの海馬神経細胞の成熟度変化を、飼育日数を追って電気生理学的に検討した。数日の飼育では両者の間に差は見られなかったが、一週間の飼育では豊富環境飼育したマウスにおいて神経成熟度の変化を示唆する変化が検出された。2)各種ストレス負荷やリポポリサッカライド投与による既存のうつ病モデルマウスを用いて、海馬の神経成熟度ならびに神経細胞機能の変化を検討した。拘束ストレスによる海馬神経系の変化が示唆されたため、通常環境と豊富環境での違いについて現在検討中である。3)コレステロール生合成経路の酵素阻害薬の効果を検討した。行動ならびに海馬神経細胞機能に対する効果を解析し、用量設定を行っている。4)うつ様行動の新規評価系に関する予備検討を開始した。マウスの皮下にRFIDプローブを埋め込み、集団飼育下での個体識別を可能にし、豊富環境におけるケージ内行動を定量化する実験系のセットアップを行った。RFIDによる記録が可能であることは既に分かったため、プローブの検出感度の最適化のための条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた、豊富環境飼育の効果の条件検討や、うつ病モデルマウスのスクリーニング等は予定通り進んでいる。新規行動評価系については装置が予想よりも早く導入できたため、実験計画を前倒しして条件検討を開始した。その分、初年度に計画していたコレステロール生合成経路の解析は着手が遅れているが、研究計画全体としては概ね予定通り進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1)新規行動評価系の条件検討を完了し、本実験を開始する。活動量、うつ・不安等の情動関連行動、社会行動の評価のための行動指標を抽出し、抗うつ薬等の精神疾患治療薬に対する反応性を解析して、その妥当性を検討する。2)初年度の解析によって、拘束ストレスモデルにおいて、他のうつ病モデルよりも明確な効果が検出されたため、継続してその解析を行う。通常環境と豊富環境での神経成熟度の変化の違い、ならびにそれに対する抗うつ薬や電気痙攣刺激の効果を検討する。新規行動評価系の条件検討及び各種行動指標の妥当性の検証が完了した場合は、ストレスモデルを用いてその行動変化を評価する。3)初年度に開始したコレステロール生合成経路阻害薬の効果の検討を継続する。上記研究計画の進行度に応じて、拘束ストレスとの組み合わせの効果や、新規行動評価系の解析を行う。4)コレステロール生合成経路の解析を行う。抗うつ薬投与又は電気痙攣刺激処置後、豊富環境飼育後、ストレス負荷、なれびにこれらの組み合わせの処置を行ったマウスを用いて、海馬及び他の脳領域におけるコレステロール含量の増加を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費に経費を計上したが、希望条件での人材が見つからなったため、次年度の人件費に上乗せする予定である。
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