発生初期の中枢神経系において、広範に伝播する脱分極波と呼ばれる自発活動が、神経回路網形成の一時期に発現することが知られている。鶏胚、マウス胚、ラット胚の摘出中枢神経系標本を用いた解析で、脱分極波はニコチン性アセチルコリン受容体に依存し、ニコチン投与によって抑制されることがわかった。In ovo鶏胚でニコチンを慢性投与し、迷走神経感覚核におけるシナプス回路網形成への影響について解析したところ、二次感覚核である傍腕核におけるシナプス後電位が著明に減弱した。このことから、胎生期におけるニコチンへの暴露は、脱分極波の抑制を介して、脳幹内シナプス回路網の機能的発生を阻害することが明らかとなった。
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