研究課題/領域番号 |
19K06964
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
成清 公弥 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (70599836)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前障 / 大脳皮質 / 海馬 / 徐波 / Sharp Wave Ripple / 睡眠 / 記憶 / 固定化 |
研究実績の概要 |
前障は哺乳類の脳で島皮質と線条体の間に位置するシート状の神経構造で、前頭皮質から後頭皮質、嗅内皮質までも含む広範な大脳皮質領域と双方性に神経投射するというユニークな特徴を持っている。この皮質との投射関係から、その役割については、多感覚情報の統合、注意の割り当て、サリエンシーの検出、意識の神経基盤など多くの興味深い仮説が唱えられているが、実際の役割はまだほとんどわかっていない。 私達はこれまでに、前障ニューロン選択的に遺伝学的操作を行えるようにしたトランスジェニックマウスを用いて、神経解剖学、電気生理学、光遺伝学などの手法により、前障が睡眠中の大脳皮質でみられる徐波活動の制御に関わることを明らかにした。本研究では、この前障による大脳皮質の徐波制御がもつ個体レベルでの役割を明らかすることを目的とし、その仮説として記憶の固定化への関与を検証する。この検証にあたっては、海馬依存的短期記憶が大脳皮質依存的長期記憶へ移行することをモデル実験として用いる。睡眠時の海馬のSharp Wave Ripple(SWR)と大脳皮質徐波の同期的な活動が記憶の固定化に重要との報告があることから、本研究では、海馬SWR→前障ニューロンの発火→大脳皮質徐波という信号の流れを想定して検証を進めている。 令和元年度においては、この信号の流れを捉えるために前障の活動と大脳皮質徐波および海馬のSWRの3つを同時に計測する実験系の開発を行った。これまでの電気生理学的記録法に加えて、新たにGCaMPによるニューロン活動のCa2+イメージング法も組み合わせて3つの活動の同時記録を行い、現在基礎的なデータが得られ始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の基盤となる前障と睡眠徐波に関するこれまでの研究成果をまとめた論文が、追加実験等を加えた改訂作業を経て、本年度、論文誌に受理・出版されたこと。前障・大脳皮質・海馬の三者間の神経活動を同時計測する手法を、従来の電気生理学的記録法に加えて、新たにCa2+イメージング法を導入しながら、確立できたこと。主にこの2点をから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で神経活動の記録方法に関しては概ね準備が整ったことから、令和2年度はマウスの記憶学習行動課題の確立を主眼に研究を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中の購入を予定していた実験機器の選定に関して、本年度行った実験から得られる予備データを待ってから決定したほうが良いとの判断に至り、購入を保留したため。選定の判断に十分なデータが得られたことから、来年度中に購入して当初の計画を進める予定である。
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