研究課題/領域番号 |
19K06965
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邉 瑞貴 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (20507173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フォルダマー / ペプチド / 配座制御 / 三次元構造 / ヘリックス |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞内タンパク質間相互作用を標的可能な新たなペプチド創薬方法論の確立を目指し、分子全体の三次元構造を制御することによって機能化したペプチドの創製に取り組んだ。具体的には、キラルシクロプロパンの構造特性を利用して配座を高度に制御した光学活性シクロプロパンδ-アミノ酸を鍵ユニットとした分子設計による(I)タンパク質間相互作用に重要なαヘリックス上の側鎖官能基の空間配置を模倣したペプチドフォルダマー、および(II)配座制御によって高い細胞膜透過性を有した環状ペプチドの設計・合成・立体構造解析を実施した。 まず、分子動力学計算を活用し、三次元構造を予測をしながら、シクロプロパンの構造特性を利用して配座を高度に制御した光学活性シクロプロパンδ-アミノ酸を鍵ユニットとしたオリゴマーや環状ペプチドの分子設計を行った。次に、分子設計した分子の有機化学合成に取り組んだ。トランス体の構成ユニットは、光学活性グリシドールを出発原料とし、立体選択的なシクロプロパン構築反応、不斉補助基を利用した立体選択的Grignard反応、および、不斉アルキル化を経て、18工程で合成した。シス体の構成ユニットは、光学活性エピクロロヒドリンからの立体選択的にシクロプロパン骨格を構築し、ヒドロホウ素化からのシス選択的な酸化反応などを経て合成した。当該年度には新たに、シクロプロパンδ-アミノ酸ユニットとD-およびL-α-アミノ酸とのヘテロオリゴマーを設計・合成した。合成したヘテロオリゴマーの溶液中での三次元構造を解析すべく、そのCDスペクトルを測定した。その結果、一定以上の長さのヘテロオリゴマーが、特定の二次構造をとっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的の立体化学を有した光学活性シクロプロパンδ-アミノ酸を、不斉補助基を利用した立体選択的Grignard反応および不斉アルキル化を経て、ある程度の大量合成をすることはできた。また、合成したシクロプロパンδ-アミノ酸を用いて、D-およびL-α-アミノ酸とのヘテロオリゴマーも数種類は合成できた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって実験をできない期間が生じたこともあり、合成したオリゴマーの構造解析を当初に考えていたように進めることが難しかった。そのため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに新たなオリゴマーおよび環状ペプチドを設計し、合成する。それらの溶液中および結晶の三次元構造を、NMR, CD, XRDなどの測定により、実験的に明らかにする。分子設計で期待した通りの三次元構造かどうか、確認する。膜透過性は、人工膜アッセイ (PAMPA) および Caco-2細胞で評価する。化学構造―三次元構造―膜透過性の三者相関を解析し、分子設計にフィードバックする。 さらに、抗がん薬の創薬標的 (I) p53/MDM2相互作用および(II)シグナル伝達転写因子STAT3の二量化を阻害する(I)フォルダマー型ペプチドおよび(II)膜透過性環状ペプチドを設計・合成し、本研究の当初の目的である本分子設計法の有用性を実証し、汎用性のあるペプチド創薬方法論の確立へと繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大の影響を受けて、当初に参加予定していた学会がいずれもオンラインへの変更、または、中止となったことから、旅費としての使用を計画していた分を消耗品費(試薬などの購入)に充てたものの、実験停止期間もあったことにより、僅かに次年度への繰越分が残ることになった。 次年度には、研究を遂行するために必要な実験消耗品(試薬など)の購入へと適切に使用する予定である。
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