当該年度は、p-トルニトリルを反応基質として用い、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、ベンジル位族炭素(sp3)-水素結合のカルボキシル化反応の開発に取り組んだ。これまでに、ベンジル位のカルボキシル化反応としては、光触媒を用いた一電子移動型反応や強塩基による脱プロトン化―カルボキシル化の二段階反応が知られているものの、基質適応範囲には未だに制限があった。例えば、前者の反応では電子豊富な基質が中心であり、電子不足な反応での実施例は限られる。また、後者では、一度全ての出発物質をベンジルアニオンに変換するが、その反応性が高いため、求電子性の置換基を有する基質には適応されなかった。今回、複合ブレンステッド塩基として、各種アルコキシド塩基、アルカリ金属塩、配位子の組み合わせを検討したところ、LiO-t-Bu、CsFを用いた際に、目的のカルボキシル化体が収率良く得られることを見出した。なお、これまでの我々の開発した芳香族炭素(sp2)-水素結合のカルボキシル化とは異なり、18-クラウン-6-エーテルを添加した場合には、収率が低下した。また、本反応系は、比較的電子中性な基質にも適応できることを明らかにした。
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