研究課題/領域番号 |
19K06968
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 信樹 東北大学, 理学研究科, 講師 (50400221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機合成 / [4+1]環化付加反応 / ジメトキシカルベン / bicyclo[3.2.1]octane / 始原植物ホルモン |
研究実績の概要 |
研究代表者は、ジメトキシカルベンと環状ジエンの分子間[4+1]環化付加反応によるbicyclo[3.2.1]octaneならびにbicyclo[2.1.1]hexane骨格の新規1段階構築法の開発を行っている。昨年度、ジエンの電子求引基を種々検討した結果、ペンタフルオロフェニルエステルとすることで反応性が劇的に向上することを見出した。この反応性の向上は研究当初の予想を大きく上回るものであった。そこで、予定していた不斉化反応より先に、当初困難と考えていた本反応の鎖状ジエンへの適用を試みた。 最近、dn-cis-OPDAおよびdn-iso-OPDAが苔類の植物ホルモンであること、加えて維管束植物の植物ホルモン ジャスモン酸イソロイシンの先祖である始原植物ホルモンであることが明らかとなり植物学者の注目を集めている。しかしながら、これらの量的供給法は知られておらず、植物ホルモンの進化に関する研究が滞っている。そこで本反応を用いたdn-cis-OPDAおよびdn-iso-OPDAの有機合成化学的供給法の開発に取り組んだ。種々検討を行ったが、鎖状ジエンへの分子間[4+1]環化付加反応は難しく、本反応を用いたdn-cis-OPDAおよびdn-iso-OPDAの合成を断念した。しかしながら、別法での合成ルートの確立に成功し、植物学者へ供給するに十分な量のdn-cis-OPDAおよびdn-iso-OPDAを得た。既に、合成したこれら化合物を用いて国内外3グループとの共同研究を行っている。また、本合成法を応用してこれらのイソロイシン縮合化合物も合成し、所属研究並びにチェコの研究グループで生物学的研究が進行している。また、昨年から進行している植物ホルモンであるジベレリンのミミックヘルミントスポル酸の合成も継続しており全合成まで残り数段階というところまで進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度発見したペンタフルオロフェニルエステルによる反応性の劇的な向上を鎖状ジエンへ適用とする試みは達成できなかったもののdn-cis-OPDAとdn-iso-OPDA、これらのイソロイシン縮合化合物dn-cis-OPDA-Ile、dn-iso-OPDA-Ileおよびその類縁化合物であるcis-OPDA-Ile、iso-OPDA-Ileの合成に成功し植物学者との共同研究へと発展させた。また、分子間[4+1]環化付加反応を用いたヘルミントスポル酸の合成も残り数段階というところまで進展しており、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度先送りにした本反応の不斉化に取り掛かる。また、へルミントスポル酸の合成を達成する。加えて、dn-cis-OPDAとdn-iso-OPDAを用いた生物学的研究にも大きく寄与していく予定である。
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