研究課題/領域番号 |
19K06970
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
門之園 哲哉 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10510282)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中分子創薬 / 創薬デザイン技術 / タンパク質分子設計 / 抗体代替分子 / 標的結合小型タンパク質 |
研究実績の概要 |
(1)イン・シリコ・スクリーニングによって、Multi-FLAPの足場となる小型タンパク質を探索した。Protein Data Bankに登録されている120アミノ酸長以下の小型タンパク質の構造情報を用いて、①天然構造のゆらぎ、②モデルペプチドを組み込んだ際のループの構造ゆらぎをMDシミュレーションにより計算した結果、複数の抗体CDR由来ペプチドの構造ゆらぎを抑制できる小型タンパク質の同定に成功した。 (2)HER2結合抗体Trastuzumabの構造情報を用いて、Multi-FLAPに組み込むCDR由来ペプチドを抽出した。HER2-Trastuzumabの複合体結晶構造をPDBより取得してMDシミュレーションを実施し、MM-GBSA法により抗原結合残基の結合エネルギーを計算した。この結果から、Trastuzumabの軽鎖CDRと重鎖CDRからHER2結合ペプチドを抽出した。 (3)2本のCDR由来ペプチドを小型タンパク質に組み込み、80種類の候補分子をデザインした。これらの候補分子の構造は全てMDシミュレーションで安定化し、組み込んだ残基の配置をTrastuzumabと比較した結果、候補分子58は非常によく似た配置(RMSD < 2オングストローム)を持つことが明らかになったため、この分子をMulti-FLAPとした。 (4)実際にMulti-FLAPの結合力を評価するために、大腸菌で発現させるためのプラスミドを構築した。また、多点結合の意義を検討するために、軽鎖CDR由来ペプチドのみあるいは重鎖CDR由来ペプチドのみを足場に組み込んだプラスミドも構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では抗体医薬の中分子化のためのデザイン理論の確立を目指している。そのために、①足場分子のイン・シリコ・スクリーニング(2019年度)、②Multi-FLAPのデザインと結合力予測(2020年度)、③Multi-FLAPの結合力評価と仮説の検証(2020-2021年度)、④Multi-FLAPの有用性評価(2021年度)の4つのマイルストーンを計画している。2019年度の研究によって既に②の「Multi-FLAPのデザイン」まで終了しており、当初計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Multi-FLAPタンパク質、軽鎖CDR由来ペプチドのみあるいは重鎖CDR由来ペプチドのみを足場に組み込んだ小型タンパク質を精製し、HER2への結合力を測定する。この測定結果から、抗原への多点結合の意義を考察する。 (2)HER2とMulti-FLAPの複合体モデルを作成し、MDシミュレーションにより結合様式を解析する。 (3)本研究期間後に、Multi-FLAPを診断薬、治療薬として高機能化を目指していくための準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったサーマルサイクラーの購入が必要なくなったため、その分が次年度繰越額として生じた。当初の計画以上に研究が進展しているため、次年度ではMulti-FLAPの有用性評価を前倒しで実施する予定であり、それらの研究に必要な消耗品費として利用する。
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