本年度はMulti-FLAPを診断薬、治療薬として高機能化するための研究開発を実施した。具体的には、小型 (5 kDa)のアルブミン結合ドメインをMulti-FLAPに融合し、血中でアルブミンに結合することで見かけの分子量を大きくし、血中滞留性を高めることを目指した。これにより、腫瘍の検出感度が高まることが期待される。 (1)Multi-FLAPのモデルとして同程度の分子サイズであるHER2結合Nanobody (Nb)を使用し、先行論文で報告されているアルブミン結合ドメイン (ABD)を融合させたABD-Nbを設計した。この融合タンパク質の遺伝子を組み込んだプラスミドを作製し、大腸菌発現系を利用して発現させてアフィニティクロマトグラフィにより精製した。また、コントロールとしてNbも同様に精製した。 (2)精製タンパク質の結合力をELISAにより測定したところ、Nb、ABD-NbのHER2への結合力は、それぞれ解離定数KDが数十pMと強く結合することが分かった。また、Nbはマウス由来アルブミンには結合しなかったが、ABD-NbはKD=数十 pMで強くアルブミンに結合した。 (3) 精製タンパク質を近赤外蛍光色素で標識し、イメージングプローブを作製した。続いて、HER2を高発現するがん細胞株をヌードマウスに移植して担がんモデルマウスを作製し、作製したイメージングプローブを静脈投与して体内動態および腫瘍検出感度を生体蛍光イメージングで評価した。その結果、ABDの融合によって小型抗原結合タンパク質の血中滞留性が向上し、腫瘍の検出感度が高まることが明らかになった。
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