研究課題/領域番号 |
19K06973
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渋谷 正俊 名古屋大学, 創薬科学研究科, 講師 (40359534)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルキン / 三成分カップリング反応 / ホウ素化合物 / 含フッ素芳香環 / 電子環状反応 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究において、アリルシラン存在下にアリールアセチレンをB(C6F5)3によって求電子的に活性化すると、アリルシランとフェニルアセチレンとペンタフルオロフェニル基の三成分が連結した生成物が得られることを見出した。本年度は、その反応の機構を解析した。その結果、B(C6F5)3がアリールアセチレンを求電子活性化しアリルシランの付加が進行した後に、ホウ素原子上のペンタフルオロフェニル基が隣接する炭素へ転位することによって求核的な活性化が起こり、アリールアセチレンとアリルシランのシクロプロパン化が進行していることが示唆された。その後に、シクロプロパン環の開環を伴った逆カルボホウ素化と逆ヒドロホウ素化が進行することで、ペンタフルオロフェニル基が置換した1,3-ジエンが生成する。この機構は、DFT計算によっても支持された。得られたペンタフルオロフェニル基置換 1,3-ジエンは、紫外光照射による6π電子環状反応が進行した後、フッ化水素が脱離しテトラフルオロナフタレンへの変換できることも見出した。 また、アリルシランの代わりに求核剤として2位置換フランを用いると、フランの開環を伴った三成分カップリング体が得られた。さらに、求核剤としてシリルエノレートを用いるとシロキシ基の脱離を伴った三成分カップリング体が得られた。いずれの反応も、アリルシランを求核剤とした反応と同様に、アリールアセチレンに対してB(C6F5)3による求電子活性化の後にペンタフルオロフェニル基の転位を伴った求核的活性化が起こることで進行したと考えることができる。今回申請者等が見出したホウ素化合物によってアルキンの求電子的な活性化と求核的な活性化が連続して起こる機構は、金や白金等の遷移金属触媒の求電子活性化と逆供与による求核的活性化の機構と類似している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パーフルオロフェニルボランの遷移金属触媒に類似した新たな反応性を見出すことに成功したため。この反応性を利用することで、ホウ素化合物特有の多様な反応を開発できると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
アリルシラン等の求核剤、アリールアセチレンとペンタフルオロフェニル基の三成分カップリンク反応についてまとめる。今回見い出したパーフルオロフェニルボランがアルキンに対して求電子活性化と求核的活性化を連続的に引き起こす遷移金属類似の反応性を利用して、あらたな反応を開発する。また、本反応性を利用した触媒反応への展開を目指す。 パーフルオロフェニルボランから生成するfrustrated Lewis pair(FLP)の反応性を利用した新規触媒的反応開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の初年度に、予期せぬ三成分カップリング反応を見出し、DFT計算による機構解析等を行ったため。
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