研究課題/領域番号 |
19K06975
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
熊本 卓哉 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (50292678)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コノクルボン / Diels-Alder 反応 / ベンザイン / クロメン / 抗HIV-1 / 3量体 / 環化付加反応 |
研究実績の概要 |
抗 HIV-1 活性植物由来3量体クロメノキノンであるコノクルボンについて,ベンザインのDiels-Alder 反応(以下DAR)を基軸とする全合成研究を行う.申請者は,ピラノベンザインとフランとのDAR を鍵反応とする単量体テレティフォリオンB の不斉全合成を達成しているが,光学活性クロメンの不斉構築,および DAR の位置選択性に課題を残していた.今回,ベンザイン前駆体の光学活性体の効率的合成法を確立するとともに,3連結フランを新たに合成し,ピラノベンザインとのDAR の位置選択性の改善を経て,コノクルボンの選択的全合成を目指す.さらに,ベンザイン受容体(アリノフィル)としてフラン以外のものを用いた3量化類縁体の簡便合成法の確立へと展開する.将来的に,コノクルボンとその類縁体の構造活性相関を通じて,コノクルボンの3量体構造のもつ抗 HIV-1 活性を明らかにしていく. この研究課題では,ベンザインの反応性を生かしつつ,選択的かつ簡便な方法での活性が保持された化合物の創出を最終目的とし,3連結フランの合成と,これを用いた光学活性ピラノベンザインとの多点DAR によるコノクルボンの全合成の達成を第一の目的とする.その際,ベンザイン前駆体の光学活性体の効率的合成や,クロメン7 位 置換基によるDAR の位置選択性の改善と計算科学的評価をあわせて検討する.さらに,種々のアリノフィルを組み合わせた多様な三量化類縁体の簡便合成法の確立を第二の目的とし,得られた類縁体の構造活性相関を通じて,三量体クロメノキノン構造の抗HIV-1活性に対する機能と有用性を明らかにしていくことを最終目的とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コノクルボン合成のための3量体フラン合成に向け,前駆体となる,異なる側鎖をもつ2種のフラノンをすでに合成している.この2つのフランは側鎖エステル部位を縮合で結合する予定であったが,現在アルキル化での結合を検討している.一方,ベンザイン前駆体となるクロメン類の光学活性体の合成は,前年度達成した「フッ化芳香環をもつ cis-桂皮アルコールの合成との分子内求核置換反応 (SNAr)」を展開させた.市販のゲラニオールより5工程を経て光学活性プロパルギルアルコールを得,このものとモノフッ化ヨードベンゼンを薗頭カップリングにて連結し,続く Lindlar 還元により,フッ化芳香環をもつ cis-桂皮アルコールへと変換した.このものSNAr による環化は速やかに進行し,対応する光学活性クロメンを得ることができた.この化合物は以前の単量体合成の鍵中間体と同一化合物であり,前回のラセミクロメンの光学分割を経由する方法と比較し,工程数は多いものの,通算収率を改善することができた(前回:5工程 4%,今回:8工程 13%).さらにジフッ化ヨードベンゼンを基質とする変換も同様に行い,所望の7位にフッ素原子をもつ光学活性クロメンの合成も併せて達成した.
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今後の研究の推進方策 |
コノクルボン合成のための3量体フラン合成と,簡素化基質を用いた Diels-Alder 反応の検討が特に遅れているため,この方面に注力する.すなわち,2つのフランパートの連結の検討と3量体フランへの変換,多点 DAR による多量体構造の構築を目指す.また,簡素化3量体の構築に向け,新たなアリノフィルとなる2つのアジド基を兼ね備えたフランの合成とその反応を検討する.また,得られた3量体構造をもつ化合物群について抗 HIV-1 活性の評価を検討する.一方,ベンザイン前駆体となるクロメン類の光学活性体の合成は,前年度に合成を達成した7位フッ素化クロメンよりフッ素化ベンザインを調製し,酸素化フランと Diels-Alder 反応を行い,その位置選択性について調査する.また,ベンザインの配向性基として F のほかO や Si をもつ基質の合成を目指し,検討を行う. 一方,置換ベンザインと酸素化フランとの Diels-Alder 反応の位置選択性に関わる計算科学による評価は,引き続きMargetic 博士との共同研究を進める.これをもとに非対称型基質における評価法を確立し,置換フランとクロメン由来ベンザインとの Diels-Alder 反応の位置選択性の改善に向けた,基質となる芳香環の置換パターンへの提唱を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が生じた理由として,年度末の支払いの項目で誤差が生じ,残額が発生したと考えられる.今後は端数が生じないよう年度内の適正利用に努める.残額については試薬などの消耗品に充てる予定である.
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