本研究では、一連の新規な芳香族アミド化合物を創製し、立体構造とその変換過程を解明することにより、分子構造の立体的な挙動を理解し、そして医薬品をはじめとする分子設計における指針となるべく、立体構造の予測と制御を目的としている。 最初に基本構造の合成過程を検討した。旧来法に比べて改善が見られ、合成の効率化を進めることが出来た。未だ十分な完成には至っていないが、必要とされる化合物群を入手可能とすることができた。 得られた新規芳香族アミドオリゴマーについて立体構造特性の検討を行い、それぞれ特徴有る性質、また外的要因によって制御できることを見出している。更に一部の大環状オリゴマーでは、包接容量を変化させる要因も見出されており、将来的にはこの手法を用いて包接能を制御すること等、構造的な知見と展望を得ている。 しかし一方で含窒素複素環特有の不安定さと副反応性もあり、これらについて比較検討するため他の芳香環を有する場合についても検討を行ったところ、立体構造及び安定性についての知見が得られ、芳香環を種々展開することへの可能性が見出された。また、通常は安定で変化が乏しいと考えられるアミド官能基自体の反応性を見直し、これらを基質とした場合の反応について検討を行ったところ、いくつかの置換基を有する場合に於いては予想外に反応性が高いことが判明した。ここから得た知見を再び含窒素型複素環を有するアミド化合物合成へ適用できることが期待される。 新型感染症の感染拡大による影響により、研究期間の延長を行ってきた。当初は研究自体の遅延のためであり、また続いて海外渡航が困難になったことに伴い、成果発表の時期を再考した。しかしながら、海外、特に米国におけるパンデミックが原因とみられる治安要因が解消されないため海外における発表を見送り、懸案となっていた追加実験の費用として使用した。
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