研究実績の概要 |
独自に開発した脱芳香化を伴ったジアステレオ選択的な二重環化反応を用いて様々なジスピロ環化合物を合成した。本反応においては、溶媒の選択が極めて重要であることを明らかにした。即ち、極性が高く、かつ、求核性の低い溶媒において良い結果を与えた。最終的に 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール (HFIP) を用いた場合に、これまでで最も良い結果が得られた。またアミド窒素上の置換基の立体的な大きさが、ジアステレオ選択性に影響することを見出した。具体的には、メチル基などの小さな置換基では立体選択性が低く、ベンジル基などでは中程度の選択性を与え、ナフチルメチル基などでは高いジアステレオ選択性を示した。一方で、置換基の電子的な性質はジアステレオ選択性には影響しなかった。即ち、メトキシ基の置換した芳香環やトリフルオロメチル基の置換した芳香環を有する化合物を基質として用いた場合には、両者の間に目立った差異は認められなかった。さらに立体選択性発現メカニズムに関する考察から、これまで合成してきた立体化学を有する環化化合物とは反対の立体化学を有する化合物についても、合成可能であることを実証した。本反応は、ピロリジン環化合物以外に、ラクトン環を有する化合物の合成にも適用可能であり、収率よく環化成績体を得ることができた。この結果は Chemistry An Asian Journal 誌に掲載され、本誌15巻24号の表紙に選ばれた。さらに、これらの結果を上回るより高いジアステレオ選択性を示す反応条件を新たに見出すことにも成功した。これについては、基質一般性について今後詳細な検討を進める予定である。
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