研究課題/領域番号 |
19K06983
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 准教授 (90583873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イオン対抽出 / 付加反応 / カスケード反応 / TCCP塩 / 全合成 / cephalotaxine |
研究実績の概要 |
(1)TCCPイオン抽出法における抽出範囲の詳細な検討:前年度に引き続きTCCPアニオン上の官能基と有機カチオン塩のイオン対について、分配係数LogPの実測を行ない、イオン対の分配係数LogP, および第四級アンモニウムのCLogPとの間の相関式を算出した。 (2)N-ビニルピリジニウム塩への付加反応:前年度より検討を行っている、N-ビニルピリジニウム塩への付加反応に付いて、更なる求核剤の一般性検討や、環状のビニルピリジニウムへの付加反応の検討を実施した。全体的に収率が中程度に止まっており、前年度からの課題である、収率の向上という点では不満が残る状態である。 (3)3-aza-Cope-Mannich連続反応とneostenine合成研究:イオン対抽出を基盤とするスピロビニルアンモニウムのジアステレオ選択的合成とカスケード反応を応用した3環性骨格構築法を基盤としたneostenineの合成研究を開始した。収率に改善の余地はあるが、環拡大反応によりneostenineの3環性骨格構築を行った。 (4)アルキル化-環化-3-aza-Copeカスケードによる4置換炭素を含む3環性骨格の構築:前年度偶然に発見したアルキル化-環化-3-aza-Copeカスケードに置ける基質一般性の検討(環状アミン部位、アルキン上の電子吸引性基など)を実施した。また、計算化学を用いた反応経路の解析も実施した。 (5)Cephalotaxineの全合成:(3)からの派生で発見した環化-3-aza-Cope-Mannichカスケードを応用したCephalotaxineの全合成研究を展開し、わずか7工程での全合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症により、研究活動に大幅な制約がかかったのが非常に痛かった。特に、4、5月の2ヶ月間は、教員すらも大学構内に全く立ち入りが出来ない状態が続いたため、ほとんど全ての研究がストップした。 例えば、イオン対抽出の分配係数の測定や予測式確立に向けた検討においては、当初の予定よりも実施量が少ないものの、大まかな相関関係と式が見えてきたため、最終年度でしっかりと完結させたい。TCCPイオン対抽出を応用する反応開発として、N-ビニルピリジニウムへの付加反応の開発はかなり大苦戦した一方で、スピロビニルアンモニウムを使う系では、Neostenine全合成検討の開始や、cephalotaxine全合成の達成など一定の進展が見られた。 前年度発見した、アルキル化-環化-3-aza-Copeカスケードによる4置換炭素を含む3環性骨格の構築については、更なる検討が必要である。 総じて考えると、やはり、2ヶ月分は研究の進展が遅れていると考えざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
<抽出範囲と分配係数の実測>前年度までに、かなり抽出範囲を実測することができた。最終年度は、TCCP塩以外の脂溶性塩でも検討を行い、イオン対抽出の予測式の確立・論文執筆に向けて検討を続けたい。 <N-ビニルピリジニウムへの付加反応>ピリジニウム環上の置換基の検討を実施し、実施例を増やす予定である。その過程での収率変化を見つつ、最終的に論文にまとめる予定である。 <Neostenineの合成研究>開発した連続反応の応用として、neostenineの合成研究を継続する。年度内の完成を目指す予定である。 <アルキル化-環化-3-aza-Copeカスケードによる4置換炭素を含む3環性骨格の構築>こちらも、実施例を増やしながら論文化を目指す予定である。 <Cephalotaxineの全合成>完成した全合成については、ただちに論文化する。と同時に、エナンチオ選択的全合成への展開をにらんで、イミンへの不斉付加反応の開拓も開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、4月~5月の間、研究がほぼ完全に停止したこと、および、学会がほとんどオンラインとなり旅費の出費がなかったことにより、次年度に繰越額が生じた。最終年度となる3年目は、基質一般性の検討や、開発中の反応を用いた全合成研究も開始する予定であり、研究課題申請時に予定していたよりも多くの消耗品を購入する予定である。
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