研究実績の概要 |
芳香族塩化物や芳香族フッ化物は医薬品や薬剤候補化合物に広く存在する。クロロ基やフルオロ基とシアノ基は創薬開発において、互いに生物学的に等価なイソスターと見なされており、よく活用される。したがって、生体機能分子に含まれるクロロ基やフルオロ基を直接[11C]シアノ基に置換する手法を開発することで、イソスターを標識前駆体とする[cyano-11C]芳香族ニトリル類機能性トレーサーを効率的に創出できると考えられる。これに加え、得られた[cyano-11C]芳香族ニトリルのさらなる変換により、多様な化学構造を持つPETトレーサーの合成に貢献できる。今年度では、Ni(0)錯体を用いる、芳香族塩化物のC-Cl結合の切断を経る11C-シアノ化反応を開発した。様々な官能基を持つ(ヘテロ)芳香族塩化物(20種類)に適用し、対応する[cyano-11C](ヘテロ)芳香族ニトリルを再現性よく高放射性収率(RCY)で得た、該標識法の汎用性を示した。バイオイソスターの創薬戦略に基づき、抗うつ薬eprobemide (MOA-A inhibitor)のクロロ基を直接11C-シアノ化することで、11C-labeled eprobemide analogueの創製も成功した。また、Sigma-1を標的する新規なPETトレーサーの標識合成応用も確立した。 更に、該高速11C-シアノ化標識法で得られた[cyano-11C]芳香族ニトリル化合物のシアノ基を活用し、[11C]amide, [11C]amine, [11C]amidine, [11C]amidoxime, [11C]tetrazole or [11C]1,3,5-triazineなど類縁体への高速変換するone-pot標識合成法方法を確立しました。
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