研究課題/領域番号 |
19K06990
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
叶 直樹 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40317293)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポリエンマクロラクタム / 全合成 / ボリルキュープレーション / 1,3-ジオキシン-4-オン |
研究実績の概要 |
本年度は、放線菌由来ポリエンマクロラクタム sceliphrolactam 推定構造の合成研究に注力した。Sceliphrolactam 推定構造は、2015年に報告された niizalactam 類の前駆体と平面構造が同一であり、生合成的にも関連があると考えられたため、その不斉中心の立体化学は niizalactam と同様であると仮定して合成を進めた。 C1-C5フラグメントは、独自に開発した手法を用いて、6位ビニル置換型 1,3-ジオキシン-4-オン化合物として合成した。我々は、合成の最終段階で 1,3-ジオキシン-4-オンからアシルケテンを発生させ、C25位アミンとの分子内環化を計画しているが、sceliphrolactam は大変不安定な化合物として報告されているため、アシルケテン発生条件を出来るだけ穏やかにする必要がある。そこで、文献情報を元に、1,3-ジオキシン-4-オンの2位の置換基を種々改変した誘導体の合成とアシルケテン発生条件の検討を行い、70°C程度の加温によりアシルケテンの発生とbeta-ケトアミド構造を構築できる方法の予備最適化を行った。 C6-C17フラグメントは、C11-C12位の立体化学が一致する D-lyxose を原料として合成を進め、アルキンのボリルキュープレーション/プロトン化などを鍵反応として立体選択的に合成した。C18-C25フラグメントは、リパーゼAKを用いた速度論的加水分解反応およびアルキンのボリルキュープレーション/プロトン化を鍵として、アジド化合物として合成した。 フラグメント合成の完了後、これらのフラグメント連結のための予備実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今期は、研究目的の一つとして設定した、不安定な生物活性ポリエンマクロラクタム天然物の合成研究を主に実施したが、全合成に必要なフラグメントの全てを光学活性体として合成できたこと、また全合成のために必要なフラグメントの連結実験にて多くの有用な情報や結果が得られたことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
不安定な生物活性ポリエンマクロラクタム天然物の合成研究に関しては、継続して研究を進める。すなわち、sceliphrolactam の全合成の実践と共に、ポリエンマクロラクタムの母骨格構造を温和かつ効率よく合成・供給する方法論を発展させる。一方、構造簡略化ポリエンマクロラクタムの合成と骨格多様化に関しても実施する。両者を同時に実行して結果を互いにフィードバックさせながら進めることで、多能性幹分子としてのポリエンマクロラクタムの化学の更なる開拓を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の蔓延により、研究実施および学会発表計画に狂いが生じたため。大きな額ではないことから、次年度の物品費としての使用を計画している。
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