研究課題/領域番号 |
19K06991
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原田 真至 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (10451759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環構築 / 不斉触媒 / らせん状変形 / 8員環合成 / 希土類金属 / Diels-Alder反応 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、触媒の鋳型効果によって反応基質に「分子ねじり作用」を加えて活性型配座へ移行させる戦略によって、通常構築が困難な中員環(8,9員環)を合成することを目指している。 まず、インドールを有する5炭素ユニット基質と、シクロプロパン誘導体を3炭素ユニット基質として用いた[5+3]環化反応の開発に取り組んだ。前者の基質は申請者が既に開発済みの[5+2]環化の際に用いた5炭素ユニット基質をそのまま適用し、後者の3炭素ユニット基質を如何に活性化し、環化させるかの条件検討に注力した。基質構造検討の結果、シクロプロパン上にカルボニル基を有する置換基を2つ導入し、希土類金属の1つであるイッテルビウム(Yb)の塩をルイス酸として添加すると、2つの基質が反応することがわかった。しかしながら、形成される結合は1つのみであり、環化までは進行しなかった。別途塩基を添加することで2つ目の結合形成が進行し、インドールが縮環した8員環の構築に成功した。また、この一連のプロセスは1つのフラスコで一挙に進行させることができることも確認している。さらに、光学活性なシクロプロパン基質を用いることで、ラセミ化することなく光学純度を維持した目的8員環生成物が合成できることも確認した。不斉配位子を添加することで、不斉反応の実現にも取り組んでいる。未だ最適化の途中であるが、現在までのところ最高で22% eeの不斉誘導を達成している。 なお、希土類金属触媒の開発過程で、固体試薬として単離・保存が可能な新しいキラル希土類錯体を開発した。本錯体は、各種希土類金属に対して合成が可能で一連のライブラリーを構築しており、Diels-Alder反応に対するルイス酸性不斉触媒として働くことを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドールが縮環した8員環合成法を開発できたことは本プロジェクトの足がかりとして重要な成果であると考えている。一方で、その不斉化については満足な結果には至っておらず、今後の課題である。 単離・保存可能なキラル希土類金属錯体の開発は当初想定していなかった成果である。本プロジェクトの目的とする中員環合成に積極的に適用検討していくことはもちろんだが、触媒機能の拡大や改善の余地もあり、より実用的な試薬として昇華する可能性を秘めている。
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今後の研究の推進方策 |
8員環合成法の不斉化の達成が急務である。中心の金属については、イッテルビウム(Yb)に固執することなく、広く他の希土類金属や遷移金属もスクリーニングの対象として検討を進める。また、不斉配位子も、錯体構造のシミュレーションなどを活用しながら構造最適化を進める。 キラル希土類金属錯体については、触媒機能の拡大と改善につなげるために配位子のチューニングを進める。適用する反応として、Diels-Alder反応や本プロジェクトでの中員環合成に限らず、広く他の合成反応にも適用検討し、実用性を実証していきたい。また、希土類金属の持つ特異な光学的性質に着目して、物性調査を進めつつ、実験的アプローチによる反応機構解析にも取り組む予定である。
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