本課題では、触媒の鋳型効果によって反応基質に「分子ねじり作用」を加えて活性型配座へ移行させる戦略によって、構築が困難な炭素環を合成することを目指した。 インドールを有する5炭素ユニット基質と、シクロプロパン誘導体を3炭素ユニット基質として用いた[5+3]環化反応の開発に成功した。最終年度は反応の不斉化に注力した。市販の不斉配位子に加えて今回新たに独自開発した不斉配位子も各種検討したが中程度の不斉収率が最高となった。一方で、新たな基質分子としてインドールの側鎖にシクロプロパンを導入した基質を設計・合成した。LED照射下の光触媒による基質の活性化と、続く分子内のシクロプロパン開環を伴う環化により、連続した2つの環が構築できると考えた。種々条件検討の結果、中程度の収率ながら目的の反応が進行した。また、シクロプロパンの隣接位に二重結合を導入した基質に対して同じ反応条件を適用すると、二重結合が関与した開環が進行することも見出した。これにより7員環を含む連続環状骨格構築が可能となった。 可視光と光触媒を用いた分子活性化の検討過程で、アルケンからエノンへの直接酸素酸化反応を見出した。さらに、二重結合へのトリクロロメチル(CCl3)基導入型アミノ環化反応を見出した。生成物は塩素を含むbeta-アミノ酸誘導体であり、医薬科学的に興味深い化合物である。最終年度にはCCl3基導入型のラクトン化にも成功した。 固体試薬として単離・保存が可能ならせん型希土類金属触媒の開発に成功し、不斉四置換炭素を含む光学活性ヒドロカルバゾール骨格合成に適用した。最終年度では基質適用範囲を拡大し、特に予めカルバゾール骨格を持つ基質を用いることでビシクロ環骨格を含む含窒素四環性化合物の立体選択的合成に成功した。生成物からの変換により、不斉四級炭素を含む連続不斉中心を持つ含窒素化合物への誘導に成功した。
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