研究課題/領域番号 |
19K06992
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
滝田 良 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (50452321)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 銅触媒 / 脂肪酸 / 重水素化反応 / ヒドロマグネシウム化反応 / 理論計算 |
研究実績の概要 |
本研究では、生命科学・創薬化学への展開を志向し、それらに資する“ロバストな”金属(触媒)反応による有用官能基導入法の開発を目的とする。本年度に得られた主な実施内容を以下の3点にまとめる。 水中での芳香族化合物水酸基化反応についてはヘテロ芳香族化合物も含めて多様な基質に適用できることを確認した。またコントロール実験などからスクロースは触媒活性の向上のみならず、銅中心の価数の制御にも寄与していると考察しており、実際に空気雰囲気下にても問題なく反応が進行することを見出した。さらに反応機構については、実験と理論計算から高い反応性のみならず、副反応が抑制され高選択的に進行する起源を明らかにした。 重水素化反応にて4つの重水素が位置および数選択的に導入された脂肪酸誘導体は、高い重水素化率を保って脂肪酸へと変換可能であった。これを活用して、シス/トランス脂肪酸や多価不飽和脂肪酸などを含む一連の重水素化脂肪酸ライブラリーを構築した。またそれを用いて、リン脂質を合成し、MS/MS解析などにおける挙動を確認している。さらに脂肪酸・脂質の代謝などについての生化学的な検討を行なっている。 ヒドリドの化学では、系中で発生したマグネシウムヒドリド種を用いるアルキンおよび1,3-エンインの選択的ヒドロマグネシウム化の活性種ならびに選択性について理論計算を行った。アルキンの反応においてはトランス選択性、また1,3-エンインの反応においてはアレーンを選択的に与える機構の詳細を明らかにした。後者についてはマグネシウムヒドリド錯体の構造によりその位置選択性が制御されていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芳香族化合物アミノ化反応、水酸基化反応と水中での遷移金属触媒反応開発の知見が得られており、さらなる反応開発の基盤となる。 脂肪酸の重水素化反応においては、実際に重水素化脂肪酸ライブラリーを構築し、生化学的研究へと展開を始めている。また重水素化体はMS/MS解析において特徴的な挙動を示し、有用であることを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
遷移金属触媒反応については1)水を反応場とする反応系においては、その特異な反応性を活用する反応へと展開する、2)不活性結合を活用し、有用生物活性分子へ適用可能な反応をターゲットとする、という観点にて研究を進める。 脂肪酸の重水素化反応については、引き続き、直接脂肪酸を選択的に反応する反応系の開発も検討するとともに、共同研究も含めて重水素化脂肪酸を活用する研究へと展開する。 ヒドリドの化学については、さらに多様な元素の活用によって新たな反応性を導き、それを実験・理論計算の両面から起源について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、一部の活動制限があったため、少額の繰越があった。研究の効率性を高めるべく、研究環境を充実させる。
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