研究実績の概要 |
これまで報告されている触媒的アミド化反応の研究において,二核ホウ素錯体が重要な中間体であることが報告されている(Chem. Sci. 2018, 9, 1058)。また、その形成段階に最もエネルギーを要することがDFT計算によって求められている。しかし,これまでのボロン酸触媒を用いたアミド化反応では,そのほとんどにおいて単核錯体が用いられ,反応系中における二核錯体形成が予想されている。はじめからボロン酸部位ふたつを結合した触媒を用いれば,重要中間体の形成においてエントロピー的に有利になるのではないかと考えた。そこで,硫黄や酸素原子などでふたつのボロン酸触媒部位を架橋した触媒の合成を行ったところ,中程度の収率で所望の触媒を得ることができた。 これらのボロン酸触媒を用いて,アミド化反応の条件検討を行った。特に,本反応では酸と塩基の絶妙なバランスにより触媒活性が変化する可能性がある。そこで,酸となる出発物のカルボン酸と,塩基となる出発物のアミンの化学量論,またこれらの添加順について詳しく検討を行った。 また,二種類のボロン酸を組み合わせるとよい結果を与える例があること(Eur. J. Org. Chem. 2013, 2013, 5692)から,二核ボロン酸触媒に,さらにもう一種類の市販ボロン酸を組み合わせて反応の検討を行った。すると,それぞれ単独にボロン酸触媒を用いた時よりも,より良い結果を与えることが分かった。 さらに,市販の単核ボロン酸に,ルイス塩基としてハロゲン化物を添加すると僅かではあるものの,目的生成物であるアミドの収率が向上することを明らかとした。
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