研究実績の概要 |
これまで報告されている触媒的アミド化反応の研究において,二核ホウ素錯体が重要な中間体であることが報告されている(Chem. Sci. 2018, 9, 1058)。また、その形成段階に最もエネルギーを要することがDFT計算(密度汎関数理論計算)によって求められている。しかし,これまでのボロン酸触媒を用いたアミド化反応では,そのほとんどにおいて単核錯体が用いられ,反応系中における二核錯体形成が予想されている。はじめからボロン酸部位ふたつを結合した触媒を用いれば,重要中間体の形成においてエントロピー的に有利になるのではないかと考え,研究を推進してきた。 これまでの研究で,ふたつのボロン酸触媒部位を架橋したジボロン酸触媒がよりよいアミド化反応の結果を与えることがわかっているため、当該年度も触媒の架橋部位の検討を行った。架橋部位として,リジットなナフタレンやチオフェンを用いる触媒設計を行った。しかし,ジボロン酸触媒は,脱水やそれに伴う多量体化をするため,合成および単離精製は容易ではないことが明らかとなった。コロナ禍によって,当該年度は研究時間が随分減少したため,残念ながら,よりよい触媒の開発には至っていない。 本課題の元来の研究目的ではないが,アミド化に関する知見を利用し,トリアジンやその類縁体のπ電子不足性を用いたアミド化反応の開発には至っている。特筆すべきは,水溶液中でのアミド化反応を目指していたため,水と類似の反応性を示すアルコール中でのアミド化反応を進展できた点である。
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