研究課題/領域番号 |
19K06995
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 耕平 金沢大学, 薬学系, 助教 (40583232)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光レドックス触媒 / N結合型糖鎖 |
研究実績の概要 |
N-結合型糖鎖は、アスパラギン側鎖窒素上にβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が結合した構造を有しており、GlcNAcに結合する糖鎖構造の違いにより、タンパク質の生化学的・物理化学的特性を様々に制御している。糖鎖の機能解明や抗体医薬品などのタンパク質製剤の改良のために、遺伝的生化学的手法でタンパク質に糖鎖の導入が行われているが、有機合成的手法を用いてN-結合型糖タンパク質と同じ結合様式で糖鎖を導入する手法は開発されていない。タンパク質と糖鎖それぞれの合成・調製は、有機合成的、生化学的手法が確立しており、さらに糖転移酵素Endo-Mを用いたGlcNAcを足掛かりとするN-結合型糖鎖の導入法も開発されている。唯一、GlcNAcの有機化学的導入法のみが開発されておらず、糖タンパク質の完全化学合成達成への最後のピースと言える。しかし、アスパラギン側鎖のアミド窒素原子は求核性が他の官能基よりも乏しいため、生合成を模倣した有機化学的糖鎖導入法の開発は困難であり、全く異なるアプローチが必要である。 著者はこれまで、トリアジニルアンモニウム塩の光レドックス触媒を用いた窒素‐炭素結合のラジカル開裂法の開発を行っており、電子不足なトリアジニルアンモニウム塩が一電子還元を受けるとベンジル位に当たる窒素‐炭素結合が開裂し、炭素ラジカルが発生することを見出している。このことから、電子不足芳香環で修飾されたヘテロ原子―炭素結合も同様に開裂可能であると考えた。中でもシステイン残基は、選択的修飾法が多く報告されており、硫黄-炭素結合をラジカル開裂できれば一炭素増炭を経てGlcNAcを有するアスパラギン側鎖を構築できると着想した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
システイン残基の選択修飾の選定・開発:システインの選択的ラベル化は様々なものが知られている。電子不足芳香環や、広い範囲のアシル基によるラベル化に着目して、本反応に適したラベル化剤を選定した。oxadiazole化合物をはじめとして、数種のチオール修飾剤を試し、合成した。また、汎用される光レドックス触媒類を用いて、いくつかの条件で、炭素―硫黄結合の開裂反応のモデル実験を試したところ、わずかであるが反応は進行し、目的物と思われる化合物が得られた。 大学の異動があり十分な研究時間を取れなかったことから、当初予定していたほどの進捗は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により講義や校務などの他のエフォートが著しく増大しているため先行きは不透明であるが、研究室の立ち上げが終わり次第、後れを取りもどしたい。方策としては行うべき研究の事柄は大きな変更はないので、今後も計画書に記載した通り行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室にストックされている試薬を活用することで、当初予定していた反応剤の原料や反応基質の購入が抑えられたため。使用計画:光レドックス触媒の購入や最終的な基質検討の際に、多種多様な化合物の購入が必要であるため、これに使用する。
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