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2019 年度 実施状況報告書

無保護カルボン酸の直截的かつ触媒的不斉反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K06997
研究機関熊本大学

研究代表者

小谷 俊介  熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (50551280)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード有機化学 / 触媒化学 / 不斉反応 / アルドール反応 / 創薬化学 / カルボン酸
研究実績の概要

カルボン酸およびその誘導体は、生体構成成分や生物活性物質などに認められる薬学研究において不可欠な官能基群であるが、これらの官能基の直截的かつ触媒的な立体選択的分子変換に関する研究は、ほとんど行われていないのが現状でである。その一方で、酸化・還元反応や、保護・脱保護などの工程を限局する高効率的分子変換の需要の高まりにより、無保護カルボン酸の触媒的不斉官能基化は、現代において実現されるべき課題の1つとなりつつある。
そのような背景の下、本申請課題では、独自に開発した「塩化ケイ素試薬によるカルボン酸の活性化」を基軸として、安価なケイ素試薬と再使用可能なホスフィンオキシド触媒を利用した無保護カルボン酸およびその誘導体の触媒的不斉反応の開発を目指した。
初年度(3年中1年目)にあたる令和元年度は、無保護カルボン酸およびその誘導体の活性化について、広範かつ網羅的な検討を実施し、いくつかのカルボン酸誘導体について容易な活性化が可能であることを明らかとした。さらに、キラルなホスフィンオキシド触媒を組み合わせることで最高で87%のエナンチオ選択性を与える新規反応の開発にも成功した。これらは、これまで活性化が困難であったカルボン酸およびその誘導体の直截的な活性化および、その有機合成への応用を示す非常に大きな研究成果である。その他にも、各種カルボン酸に対して種々の求電子剤を作用させることで、高い立体選択性にて1,4付加反応やイミンへの付加反応が円滑に進行することも明らかとし、いくつかの無保護カルボン酸の触媒的不斉反応の端緒を得ることにも成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は、これまで活性化が難しいとされていたカルボン酸に加えてその誘導体の活性化にも挑戦し、その活性化に成功するだけでなく、ホスフィンオキシド触媒を組み合わせた高立体選択的反応をいくつか見出し、有益な研究成果を多く得ることができた。これらは、当初計画していた3つの主な計画のうちの2つに該当し、研究計画全体として大きな進捗を得ることができていると考える。さらに、次年度は、これらの研究成果を基盤として大きく展開が期待されるため、本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

引き続き当初の研究実施計画に従い、本研究活動を推進する。初年度に得られた有望な結果を中心に本研究課題の基盤を固めることに加えて、カルボン酸の化学選択的な活性化に関する検討を行い、よりユニークな分子骨格構築法の開発にも着手する。さらに、すでに良好な結果を得ている1,4付加反応やイミンへの付加反応について、より詳細に検討し具体的な研究成果へと展開する。
以上のように、令和2年度は、初年度に得られた知見の可能性を最大限に拡張する1年とする予定である。この他に、初年度の研究成果を具体的にして積極的な公表にも努めていく。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Recent advances in asymmetric phosphine oxide catalysis2020

    • 著者名/発表者名
      Kotani, S.; Nakajima, M.
    • 雑誌名

      Tetrahedron Lett.

      巻: 61 ページ: 151421, 151421

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2019.151421

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Melinjo seed extract increases adiponectin multimerization in physiological and pathological conditions.2020

    • 著者名/発表者名
      K. Oniki, T. Kawakami, A. Nakashima, K. Miyata, T. Watanabe, H. Fujikawa, R. Nakashima, A. Nasu, Y. Eto, N. Takahashi, H. Nohara, M. Ann Suico, S. Kotani, Y. Obata, Y. Sakamoto, Y. Seguchi, J. Saruwatari, T. Imafuku, H. Watanabe, T. Maruyama, H. Kai, T. Shuto
    • 雑誌名

      Scientific reports

      巻: 10 ページ: 4313

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s41598-020-61148-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lewis Base-catalyzed Enantioselective Conjugate Reductions of β,β-Disubstituted α,β-Unsaturated Ketones with Trichlorosilane: E/Z Isomerization, Regioselectivity, and Synthetic Applications2019

    • 著者名/発表者名
      Sugiura, M.; Ashikari, Y.; Takahashi, Y.; Yamaguchi, K.; Kotani, S.; Nakajima, M.
    • 雑誌名

      J. Org. Chem.

      巻: 84 ページ: 11458, 11473

    • DOI

      https://doi.org/10.1021/acs.joc.9b01298

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stereoselective Synthesis of 2-Fluoro-1,3-Diols via Lithium Binaphtholate-Catalyzed Aldol-Tishchenko Reaction2019

    • 著者名/発表者名
      Asano, T.; Kotani, S.; Nakajima, M.
    • 雑誌名

      Org. Lett.

      巻: 21 ページ: 4192, 4196

    • DOI

      https://doi.org/10.1021/acs.orglett.9b01371

    • 査読あり
  • [学会発表] キラルなリチウムビナフトラートを用いた有機リチウム試薬の不斉1,2-付加反応2020

    • 著者名/発表者名
      浅野聡文、小谷俊介、中島 誠
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] ホスフィンオキシドを有機分子触媒とするオキセタンの不斉開環反応2020

    • 著者名/発表者名
      田島侑佳、田中大貴、小谷俊介、中島 誠
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] ホスフィンオキシドを有機分子触媒、トリクロロシランを反応剤とするアルデヒド間の不斉交差アルドール反応の開発2020

    • 著者名/発表者名
      小谷俊介、花牟禮匠矢、森 祥輝、中島 誠
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] トリクロロシランを反応剤とするホスフィンオキシド触媒によるアルデヒド間の不斉交差アルドール反応2019

    • 著者名/発表者名
      小谷俊介、花牟禮匠矢、森 祥輝、中島 誠
    • 学会等名
      第45回反応と合成の進歩シンポジウ
  • [学会発表] α,β‐不飽和アミドを求電子剤としたエナンチオ選択的Michael反応の開発2019

    • 著者名/発表者名
      下田康嗣, 坂本翠, 浅野聡文, 小谷俊介, 中島誠
    • 学会等名
      モレキュラー・キラリティー
  • [学会発表] ホスフィンオキシドを触媒とするカルボン酸の不斉アルドール反応2019

    • 著者名/発表者名
      吉原勇作, 小谷俊介, 中島誠
    • 学会等名
      万有福岡シンポジウム
  • [学会発表] リチウムビナフトラート触媒による不斉アルドール‐Tishchenko反応を利用した含フッ素連続不斉中心構築法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      吉原勇作, 小谷俊介, 中島誠
    • 学会等名
      次世代を担う有機化学シンポジウム
  • [学会発表] Phosphine Oxide-catalyzed Enantioselective Aldol Reaction of Carboxylic Acids2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Kotani
    • 学会等名
      第12回 有機触媒シンポジウム
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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