研究実績の概要 |
脱離基の位置をC14位からC9位に変更することで、付加/環化/フラグメンテーション連続反応の立体選択性の改善を試みた。基質の安定性を考慮して、脱離基としてはスルホニル基を選択した。アリルスルホンをラジカル環化反応の条件下に附すと、期待通りC8、C9位間に二重結合が導入された生成物が得られた。しかし、主生成物は望まないC15位エピマーとわかった。スルホンとエステルの立体反発が原因と考えられる。本立体化学の問題を回避するために、メチレンマロン酸エステルをアクセプターに用いた結果、望みの立体異性体を収率89%で得ることに成功した。続いて、アルケンのヨードラクトン化を行い、C8位に酸素官能基を導入した。ヨウ素を還元的に除去した後、tert-ブチル基の除去と脱炭酸、アルコールのTBS保護、ラクトンの還元を順次行い、1,4-ジオールへと導いた。ここで、第一級アルコールのみをトシル化しようとしたところ、望まない分子内エーテル化が進行してテトラヒドロフランが得られた。この結果は、シスヒドロインダン骨格により反応点が近接した形で固定されたためと考え、C9-C11位間に二重結合を導入して基質の配座を変えることを考えた。また、tert-ブチル基の除去が低収率であったことから、エステルをメチルエステルに変更した。メチルエステルを用いたラジカル環化反応は従来通り進行し、環化生成物を与えた。脱メチル化とヨードラクトン化により得たカルボン酸をDBU存在下で加熱すると、脱炭酸とヨウ化水素の脱離が一挙に進行し、望みの位置に二重結合が導入されたラクトンへと導くことができた。
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