研究実績の概要 |
昨年度に、当研究室で開発した23残基からなるマイオスタチン結合ペプチドを基盤とし、その12位に光酸素化触媒を導入したコンジュゲートを用いて、マイオスタチンを選択的に光酸素化および阻害できることを報告した。当該年度では、そのペプチド鎖における異なる位置に光酸素化触媒を導入した一連のコンジュゲート群を合成した。これらのコンジュゲートを用いて、光酸素化活性、マイオスタチン選択性、マイオスタチン阻害活性、細胞毒性等の機能を比較した。全てのコンジュゲートは光照射下において、マイオスタチンを効率的に酸素化した。それらの中でも、16位に光酸素化触媒を導入したコンジュゲートは良好なマイオスタチン選択性を示すとともに、従来のコンジュゲートより強力にマイオスタチン活性を阻害することができた。また、一連のコンジュゲートは光照射下及び非光照射下において、顕著な細胞毒性を示さなかった。以上の結果より、従来のものより優れたコンジュゲートを獲得することに成功し、本成果をH. Okamoto et al. “Development of functionalized peptides for efficient inhibition of myostatin by selective photooxygenation”, Org. Biomol. Chem., 2021, 19, 199-207. にて報告した。マイオスタチンの阻害は、筋ジストロフィー等の筋萎縮性疾患に対する治療戦略として注目されていることから、マイオスタチンを光酸素化によって効率的に阻害する本手法は、新たな治療方法となる可能性がある。
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