前年度まで、マイオスタチンを効率的に阻害するために、23残基のマイオスタチン結合ペプチドをリガンドとし、そのリガンドの異なる部位に光酸素化触媒を導入した種々コンジュゲートを開発してきた。さらに、これらのコンジュゲートを用いることで、マイオスタチンの選択的光酸素化および不活化が可能であることを報告してきた。本年度は、この手法を生体内で実施することを指向して、より低分子かつ生体内安定性の高いコンジュゲートを獲得した。すなわち、本研究室で見出された、マイオスタチン親和性を有する短鎖化D-ペプチドを基盤とした新規コンジュゲートを合成した。また、このコンジュゲートが光照射下においてマイオスタチンを酸素化することを確認した。今回開発されたコンジュゲートのペプチド部位は、従来のものより低分子化されていること、D-アミノ酸から構成されているために酵素耐性を有することから、生体適合性が高いと言える。本コンジュゲートの開発によって、生体内におけるマイオスタチン光酸素化の実施可能性が高くなったと考えられる。マイオスタチンは生体内にて筋肉量を負に制御していることから、その阻害は筋肉量の増大を起こし、筋ジストロフィー等の筋萎縮性疾患に対する治療戦略として注目されている。すなわち、今回のコンジュゲートによって生体内におけるマイオスタチンの光酸素化および不活化が実現されれば、今までにない治療方法の開発につながると期待される。
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